評価の声があがる一方で、水際対策の「穴」を指摘する専門家もいる。現在、海外から日本に入国する際、空港では感染の有無を確認するため、「抗原定量検査」を実施。抗原定量検査で陽性であったり、判定ができなかったりした場合にPCR検査をしている。これに対し「なぜ初めからより精度の高いPCR検査をしないのか」という指摘だ。
自民党外交部会長の佐藤正久参議院議員は<南ア方面等からの入国者には、水際対策で抗原定量よりPCR検査を多用する柔軟性も必要>などとツイッターで発言。立憲民主党の石垣のりこ参議院議員も<水際で、最も精度の高いPCR検査を国が責任もって行うしかない>と問題提起している。
抗原定量検査とは、専用の機器を使い、ウイルスのもつ特徴的なたんぱく質(抗原)の量を調べる検査のことだ。9月に薬局での販売が承認された抗原検査キットは「抗原定性検査」と呼ばれるもので、抗原があるかどうかを調べる。「定量」検査の方が「定性」検査よりも精度は高いが、PCRには及ばないとされている。
空港の検疫はもともとPCR検査が実施されていたが、昨年7月、抗原定量検査に変更した経緯がある。厚生労働省の担当者によると変更の理由は「PCRと同等程度の感度と特異度(検査の精度のこと)があることと、現場への負担を考慮したものだ」という。
PCR検査は結果が出るまでに数時間かかる一方で、抗原定量検査は30分程度で結果が出るとされる。また、PCRは専門のスタッフが鼻などに綿棒を入れて、粘液を採取する一方で、抗原定量検査は唾液で簡単にサンプルを採取することができる。また、PCR検査は手間に加えて、専門スタッフの感染リスクもあった――。こうした理由で、空港で多くの入国者を検査するためには「抗原定量検査が実効性がある」(担当者)というのが厚労省の言い分だ。
これに対し、PCR検査に詳しい国立遺伝学研究所の川上浩一教授は「抗原定量検査とPCRの感度は明らかに違う。抗原定量検査ではすり抜けが出てしまう」と指摘する。