「昔は書く側でしたが、京成電鉄入社後は消す側になりました」と、藤澤弘之駅長。伝言板のメッセージは写真に撮って、エレベーター前に飾られている(photo:編集部・福井しほ)
「昔は書く側でしたが、京成電鉄入社後は消す側になりました」と、藤澤弘之駅長。伝言板のメッセージは写真に撮って、エレベーター前に飾られている(photo:編集部・福井しほ)

「インターネットやSNSと違うのは、書いている人の姿が見えること。だから変なことを書く人がいないんです」(藤澤さん)

 かつて伝言板を使っていたという女性(62)は、「余白」に魅力があったと回顧する。

「たった一言でも、書いた人や伝言の受け手に思いを巡らせることができました。仲の良い同僚かなとか、若いカップルかなとか、いろんな物語や余白を想像するのも楽しかった。書き込める範囲や時間が限られているから、そこに人間味を感じられたんです」

 現代ならではの使い方とも言えたのが、SNSと伝言板を組み合わせて、両方を効果的に使う人もいたことだった。藤澤さんは振り返る。

「書き込んだ内容を写真に撮って、ツイッターに載せて楽しんでいる方も見かけました。漫画『シティーハンター』を模倣して、『XYZ』と書く方もいたり。盛り上がりは想像以上でした」

 ツイッターにアップされた伝言板の写真にも、さまざまなリプライが集まった。インターネットとアナログを掛け合わせるのは、新たな“余白”の楽しみ方の一つともいえる。(編集部・福井しほ)

AERA 2021年12月6日号

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福井しほ

福井しほ

大阪生まれ、大阪育ち。

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