■人間性濃く出た作品
SKY-HI:僕がエンターテインメントにネガティブなものを強く感じていた時期は、間違いなく日本のエンターテインメントは下降線をたどっていたと思う。だから、負×負で正になったということなんじゃないかな。諦めなくて良かったです。
――プロデューサーになって、自身のクリエイティビティーも大幅に変化した。
SKY-HI:自分の強みを自覚するようになりました。何かを人に教える際に、自分ができることを言語化することで、自分の精度が上がった。やっていなかったことも、教える上でやる必要が出てくるので、新しい気付きも生まれます。結果として、自分を客観視できるようになり、いま、やっとおぼろげながら自分のアーティスト像が見え始めてきたところです。
――36歳の誕生日を迎える12月12日にアルバム「THE DEBUT」をリリースする。
SKY-HI:そのアーティスト像に向かって制作を進めていったら、決定的に自分に欠けているピースが見えてきて、愕然としたんです。それで方向性を変えたところもある。結果、ペンキをぶちまけたような、愚かしい衝動の塊みたいな作品になるといいなと思っています。
それを象徴するような、「うっせーなバカ!」って叫ぶような曲があるんです。曲ができた翌日にJUNON(BE:FIRST)と二人の取材があって、「全然社長っぽくない曲作っちゃった」と歌詞を見せたら、「社長っぽくはないですけど、超SKY-HIさんって感じです」と言われて納得しました(笑)。人間性が非常に濃く出て、かつ新人みたいなアルバムになると思います。
――アーティスト業、プロデュース業、会社経営をすべて並行して行う。日常は多忙だ。
SKY-HI:フェス、ライブ、レコーディング、MV撮影……アーティストとしていろいろな仕事があり、その中で重要度の差はあります。例えば絶対に成功させなければいけないステージがあったりする。社長業も同じです。冒頭30分が欠けても大問題にはならないミーティングもあれば、1分遅刻したら会社が消し飛ぶ可能性がある場もある。そういう差を自覚した上で、逆にすべてが等しいと捉えています。
僕にとって、すべてが日常です。食事すること、曲を書くこと、歯を磨くこと、会議に出ること、財務関連、人事関連、新規企画関連、新曲制作、ツアー……自分に直接関わるものであれ他の人のものであれ、変わらずに等しくはまっている感じで、切り分けてはいません。