この代替服務の対象にBTSのような国益への寄与度が高い大衆芸能分野のアーティストを含めるかどうか、法改正について論じられているのだ。BTSを前提にした法改正案で「BTS兵役特例」と呼ばれる。大衆芸能分野については客観的な基準を設けるのが難しく、議論はなかなかまとまらない。
確かに、世界を席巻中のBTSが活動を一時停止するのは「国家的損失」と言っても過言ではない。BTSを現役兵として入隊させることに反対する声が広まるなか、18年、国会の国防委員会で「バイオリンやピアノのようなクラシック音楽のコンクールで1位になれば代替服務の対象になるのに、大衆音楽でビルボードチャート1位になっても対象にならないのはおかしい」という問題提起があり、本格的に議論されるようになった。
■後ろ指をさされるより
一方で、韓国の一般の人たちに意見を聞いてみると、「BTSは兵役の義務を果たした方がいい」と言う人が意外に多い。その方が彼らの今後の活動に有利だと考える人が多いようだ。韓国では「男性は兵役の義務を果たして一人前」という考え方が根強く、「BTS兵役特例」が広く国民の合意を得られるのかは微妙なところだ。
実際、「ARMY(アーミー)」と呼ばれるBTSファンの間ですらメンバーの軍入隊を望む声がある。免除となってメンバーが後ろ指をさされるくらいなら、義務を果たして堂々と活動してほしいということだ。兵役の期間が以前よりも短くなり、さほど大きなブランクにならないということもある。現在、陸軍18カ月、海軍20カ月、空軍21カ月となっている。(ライター・成川彩(ソウル))
※AERA 2021年12月13日号より抜粋