アメリカン・ミュージック・アワード2021で最多の3冠に輝いたBTS。昨年に続きグラミー賞にもノミネートされた(gettyimages)
アメリカン・ミュージック・アワード2021で最多の3冠に輝いたBTS。昨年に続きグラミー賞にもノミネートされた(gettyimages)

 グローバルスターBTSの兵役をめぐり、韓国で議論が割れている。入隊すれば国益を損なうという意見がある一方、公平性を求める声も。どうなるのか。AERA 2021年12月13日号から。

【図】韓国の兵役と芸能人をめぐる動き

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 BTS(防弾少年団)が兵役免除の対象になるのかをめぐり、韓国で議論が過熱している。来年3月の大統領選挙を控え、有権者の支持を得ようという候補者たちの目論見もあるようだ。

 例えば野党「国民の党」の安哲秀(アンチョルス)候補は「BTSには国益への寄与度が高い他の分野の青年たちと同様に『代替服務』を認めるべきだ」と主張する。代替服務については後述するが、軍入隊の免除に理解を示す。一方、与党「共に民主党」の李在明(イジェミョン)候補は「公平性の面で延期が望ましく、免除はできる限り避けるべきだ」と述べ、免除には否定的な態度を示した。

 当のBTSメンバーたちは兵役免除を希望する発言はしていない。最年長のJIN(29)は「韓国の青年として兵役は当然と思っている。メンバーたちともよく話しているが、みんな兵役に応じる予定」と話していたほどだ。「政治家たちがBTSの人気に便乗している」という指摘もある。

 韓国は日本と違って男性に兵役の義務があり、20歳前後で軍に入隊する場合が多いが、芸能人は入隊を遅らせる傾向がある。できるだけ若い間に活動しようとするためだ。BTSの兵役をめぐっては昨年12月、兵役法改正案が可決され、大衆芸能分野のアーティストの軍入隊を満30歳まで延期できることになった。これによりBTSのメンバー7人全員が2022年まで活動できるようになった。

■活動停止は国家的損失

 芸術・スポーツ分野で活躍する青年たちの兵役免除は、軍に入隊する代わりに「芸術・スポーツ要員」としてボランティア活動など一定の義務は果たすもので「代替服務」という。芸術分野は国際・国内芸術競演大会、スポーツ分野は五輪やアジア競技大会の成績によって決まる。例えば15年のショパン国際ピアノコンクールで優勝したピアニストのチョ・ソンジンや、サッカーのイングランド・プレミアリーグ、トットナム所属の孫興民(ソンフンミン)が代替服務の対象となっている。孫は18年のアジア競技大会優勝メンバーだ。

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