──今後、早慶で連携や協力の予定はあるのでしょうか。

田中:すでに図書館は連携を始めています。伊藤塾長とは、データ科学のリカレント教育(生涯を通じて学び続けること)を早慶で一緒にやることができないかと話しています。文系の社会人でもデータ科学を学ぶ必要がある方は多いし、早慶はビジネススクールも理工学系学部もあるので連携も可能だと考えています。また、優秀な教員には慶應と早稲田両方に勤務するジョイント・アポイントメントも考え始めています。

■一緒に組むことが大事

伊藤:おっしゃる通り、世界に貢献する研究成果や社会実装を出すためには、一緒に組んで展開することが大事です。早慶対決とか、どこの大学が一番とかやっていると、どんぐりの背比べになってしまう。それからダイバーシティーは早稲田が進んでいるので、早稲田に学びながら慶應でも進めていきたいです。

──それぞれの大学で今後力を入れたいことはなんでしょう。

田中:コロナのパンデミックは、正解がわからない問題に取り組む「たくましい知性」を持つことの必要性と、日本のDX(デジタルトランスフォーメーション)の遅れを突きつけました。

 早稲田では学部の垣根なく、どの学生も数学的思考やデータ科学を学べる基盤教育を14年に整えました。高校時代に受験に必要がないからと、数学を捨ててしまうのはよくない。早稲田では入学してから文理の壁を越えて、学生が学習効果を一層高めていけると思います。

伊藤:私はもっと学生たちの力を信じて、学生たちに企画を任せていきたい。慶應では3年前からプログラミングを学生同士で学び合い、自らの着想を社会実装化できる人材育成を目指す「AI・高度プログラミングコンソーシアム」を始めました。

 30年後、50年後の社会は若者が作っていくもの。学生が受け身になるような教育ではなく、学生自身が未来を考え、だから今これを学んで、こんな力をつけて社会に出ていきたいと考えられるような場を作りたいです。

田中:50年には18歳人口が80万人と今の約3分の2になると言われ、各大学が学習効果を上げていかないと日本の国力は落ちてしまいます。大学生の8割が学ぶ私立大学の責任は相当大きい。日本の私学を代表する早慶が変われば、他の私学も変わると思います。(構成/編集部・深澤友紀)

AERA 2021年12月13日号

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