田中愛治(たなか・あいじ、左):1951年、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。米オハイオ州立大学大学院で政治学博士号取得。2018年11月から早稲田大学総長(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)/伊藤公平(いとう・こうへい):1965年、神戸市出身。慶應義塾大学理工学部卒、米カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。2021年5月から慶應義塾長(撮影/写真部・張溢文)
田中愛治(たなか・あいじ、左):1951年、東京都出身。早稲田大学政治経済学部卒。米オハイオ州立大学大学院で政治学博士号取得。2018年11月から早稲田大学総長(撮影/写真部・戸嶋日菜乃)/伊藤公平(いとう・こうへい):1965年、神戸市出身。慶應義塾大学理工学部卒、米カリフォルニア大学バークレー校で博士号取得。2021年5月から慶應義塾長(撮影/写真部・張溢文)

 実際に我々の(同窓組織)三田会のネットワークは世界中に広がっていますし、寄付もいただいて慶應を応援してくれる人がたくさんいる。ただ、慶應だけがよくなればいいわけではなく、義塾というのはパブリックスクールの訳語ですから、公益のことを考えた学校です。

■国際化をさらに拡大へ

──伊藤塾長は留学経験があり、帰国後も慶應の教員として海外に学生を送り出してきました。ただ、早稲田が04年に国際教養学部を設置するなど、国際化については早稲田が一歩リードしている感じを受けます。

伊藤:以前にも、慶應塾生新聞で学生記者から「他大学に比べ国際色が豊かではない」と質問され、ショックでした。江戸時代に3度も欧米に渡った福澤諭吉先生がこれからの時代は学問で世界に出ていこうと創立した義塾において、他大学のほうが国際化が進んでいることは由々しき事態で、天国の福澤先生が残念がっているはずです。

 すでに一部の学部に英語だけで卒業できるプログラムや、留学先の学位も取れるダブルディグリー制度があるなど中身は充実していますが、見えるようになっていないのかもしれません。さらに拡大させ、学生にチャンスを作っていきたいです。

──慶應にあって早稲田にないものの代表が「医学部」です。慶應は01年に看護医療学部、08年に薬学部を開設したほか、歯学部の開設も目指しています。

田中:医学部新設は歴代の総長の悲願でもありましたが、今は難しいと思っています。今日の医学は医学博士だけの研究教育では十分でなく、医学と理工学や社会科学との連携が必要だそうで、早稲田が単科医科大学と連携できれば、日本の医学のあり方を変えることに貢献できるのではないかと考えています。

 慶應は医学部も理工学部も経済学部もあります。早稲田が頑張れば、切磋琢磨(せっさたくま)する慶應はさらに先に進めるでしょう。それが日本の医学の在り方を変えることにもなると思います。早慶は常に競い合っているように見られますが、案外仲が良いです。

■リカレント教育で連携

伊藤:私も、5月に塾長になってまず田中総長を訪ねました。何を学ぼうと思ったかというとコロナ対応。早稲田は対応が早く、素晴らしいメッセージも出されていました。田中総長にお会いした3日後に、国から大学でのワクチン接種の話がきたのですが、早稲田からコロナ対応を教わっていたからすぐに手を挙げました。学生や地域の方5万人への接種ができました。

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