ところが、日本では医療従事者への3回目の接種が12月1日に始まったばかり。しかも、世界標準から外れた「原則8カ月後」との政府方針を、ようやく「6カ月後」へ前倒しすることを検討している始末で、またも後手に回っている。英医師会誌「BMJ」がイスラエルの成人約8万人を対象にした研究によれば、2回目のワクチン接種から3カ月経つとだんだんと感染が増え始め、6カ月後には感染率が15.5%に上った。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう指摘する。
「こうしたデータから、諸外国では早くからブースター接種を進めており、これから実施するという先進国は日本くらいです。1月から高齢者に接種するといいますが、本格的に行えるのは2月以降でしょう。いま国内の感染が抑えられているのは、若年層への接種が遅れたため、まだ免疫が効いているというケガの功名でしかない。冬場のピークの規模はまだわかりませんが、重症化する高齢者の増加が危惧されます」
ワクチンの在庫が枯渇しているわけでもないようだ。自治体の集団接種に協力してきたナビタスクリニック理事長の久住英二医師はこう明かす。
「私たちのクリニックには、数百人分の在庫を抱えているところがあります。市からワクチンを保管する超低温フリーザーごと預かっており、電気代もすごく食うのでブースター接種で早く使い切りたいが、打たせてもらえない。追加接種はとにかく可及的速やかにやるべきで、在庫を抱えているところからどんどん打ち始めるべきです。行政は、それでは平等ではないというようなことを言いますが、遅いところに合わせて接種を止めているのはナンセンスです」
肝心の水際対策にも“穴”がある。日本の空港検疫では、PCR検査より精度が低い抗原検査を利用しているからだ。
「その理由について、厚生労働省は『最新定量型抗原検査を用いれば、PCRと感度は変わらない』としていますが、そんなことはない。抗原検査ではウイルス保有量が少ない患者を見逃す可能性があり、オミクロン株の検疫にふさわしくないのは明らかです」(上医師)