冬に積雪の多い地区もある。新潟市江南区役所の担当者は「冬はお年寄りが転倒したりするなど、ごみを出しにくいという声があった」と話す。江南区では12~3月の冬場に、地元の中学生などが高齢者宅から集積所へ、ごみ出しを手伝う仕組みがある。冬場以外は、自治会などが支援する。冬場に手伝う地元の中学生について、担当者は「3年生の三百数十人のうち、やりたい生徒が多いときで100人を超えていた」と話す。これに対し、利用希望者は多いときで20人ほどという。

 千葉県我孫子市は、ごみ収集の民間業者への委託を進めてきた。担当者は「ごみ収集業務を先行してアウトソーシングした」と話す。高齢者のごみ出し支援でも、玄関先にごみが出ていないと、委託業者が安否確認で呼び鈴を押す。返事がないと役所へ報告し、当日中に役所が安否確認をする。

 千葉市も、ごみを集積所から収集するのを民間業者に委託している。収集業務課の担当者は「直営だけではできない」と話す。

 ごみ問題に詳しい大東文化大学法学部の藤井誠一郎准教授は、ごみ収集の現場は人手不足が深刻と指摘する。市町村の業務効率化などで公務員を減らし、ごみ収集を直営でなく、民間業者へ委託する自治体が増えているとみている。だが、自治体は「現場がわからなくなる」(藤井さん)という懸念も出てくる。藤井さんは清掃車に乗り、ごみを収集した経験を持つ。2016年から17年に東京都新宿区、20~21年に東京都北区、21~22年に神奈川県座間市で、週に1回程度、ごみを収集した。

 藤井さんは「職員もかなり高齢化している。欠員補充をしないまま、人を減らしている」と話す。ごみを圧縮して運ぶプレス車に詰め込むのは「ある程度体力がないとできない。高齢の人にそればかりさせると、すぐに腰が悪くなる」という。

 一方、通常の収集は委託でもいいが、「不測の事態が起こると委託では回らない」と藤井さんは指摘する。停電や大雪、自然災害の際に「直営の底力が出てくる」と話す。また、現場で「住民の声を聞いて困りごとを担当課につなげるなど、住民のニーズに対応した行政を行うこともできる」と言う。

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