※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)

 ところが冒頭のように「型取りがイヤ」という人は多いのです。嫌な理由としては、

「なんだかわからない、ぐにゃっとした感覚が気持ち悪い」

「ずっと口を開けたままでいるのが、つらい」

「トレーを口に入れられた瞬間、おえっ、となる」

「のどに落ちそうで怖い」

 などが聞かれます。

 確かに印象材が口に入ったときの感覚は特殊です。

「口を開けたままでいるのがつらい」

 という訴えもよくわかります。特に奥歯の歯型を取るときや、総入れ歯やマウスピースで、上下全部の歯型を取ときはつらいでしょう。「よだれがたれてきて、イヤ」と言う声も聞きます。でも口を閉じてしまって印象材が固まりだしてからトレーが不用意に動いてしまったら、やり直しになってしまいます。

「顎(あご)に力を入れないように」すると、意外と楽に口を開けていられます。ぜひやってみてください。

「おえっ」となるのは、嘔吐反射です。歯ブラシをちょっと入れただけで起こる人もいます。歯科恐怖症の一種といわれています。

 型どりは場合によっては上顎にもおこないます(入れ歯など)。この場合、口のかなり奥まで印象材が入ります。

 私は以前、大学で研修医があやまって患者さんの喉のほうまで印象材を流してしまい、喉の型が取れてしまったケースを目の当たりにしました。このようなことを経験した患者さんは歯医者に行くこと自体が怖くなってしまうかもしれません。

 ただ、私の経験では嘔吐反射は高齢者よりも若い人のほうが多いように思います。

 高齢になるとのみ込む力が落ちることとも関係するのかもしれません。この患者さんはやはり高齢者だったために刺激に鈍感になっていたようです。

 嘔吐反射が起こりやすい人には、いくつか対策があります。まず、印象材の量を少なくすることです。また、上を向くと気持ち悪くなりやすいので、できるだけデンタルチェアを起こした状態で型取りをおこないます。よだれがたくさん出てきてしまった場合も、デンタルチェアを起こすようにしています。

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