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「ホメる子育て」が流行っています。子どもに対しては、できなかったことよりもできたことをホメる。肯定的な言葉をシャワーのように子どもに浴びせて自己肯定感を育む教育法です。不登校新聞編集長の石井志昂さんは、「とてもよい子育て法だと思うのですが万能ではない」と思っているそうです。「ホメていたつもりが子どもを追い詰めてしまった」ということもあるからです。いま注目されているのが「聞く子育て」。子どもの話をよく聞き、何気ない雑談を重ねていく。「塾や習い事よりも雑談のほうが成長の助けになる」と言う専門家もいます。今日は「聞く子育て」について紹介したいと思います。

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 まずは、なぜホメる子育てが、ときに子どもを追い詰めてしまうのか。先日、お手紙をいただいお母さんの事例から解説します。

 お母さんにはお子さんが2人いて小学5年生の長男が不登校です。息子さんの登校しぶりが始まったのは小2のとき。突然、玄関で泣き始めた日から学校へ行かなくなりました。なんとか登校ができるようにとお母さんは厳しく接したり、励ましたりしましたが、まったくダメ。最後の手段として「ホメる対応」に徹したそうです。1時間でも、2時間でも学校へ行った日はホメる。教室に入れなくても学校へ行くだけでホメる。学校へ行けなくても宿題をしただけでホメる。「小さな成功体験を積むために」と必死でホメたそうです。

 学校へ行けない子が行けないなりにできることをホメるのは、よいことだと思う人が多いでしょう。教員のなかにも、このような手法を推奨する人もいます。

 ところが息子さんの状況は悪くなりました。ホメられても気分はよくならず、逆に強烈な自己否定感を身にまとってしまったのです。顕著にそれが現れるのは日曜日の夜です。明日から学校が始まるというタイミングで、腹痛に見舞われたり、泣き出したり。そして、あるとき、お母さんにこうこぼしたそうです。

「次に子どもが産まれたら僕を捨ててね」

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石井志昂

石井志昂

石井志昂(いしい・しこう)/1982年東京都生まれ。中学校受験を機に学校生活が徐々にあわなくなり、中学2年生から不登校。フリースクールに通ったのち、NPO法人で、不登校の子どもや若者、親など400名以上に取材。現在はNPO法人を退社しジャーナリストとして活動中。著書に『「学校に行きたくない」と子どもが言ったとき親ができること』(ポプラ社)『フリースクールを考えたら最初に読む本』(主婦の友社)。

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お母さんはすっぱり登校をあきらめた