木原誠二官房副長官
木原誠二官房副長官

 資料によると、「ワクチンの供給力の中で、できる限り前倒しする」とした上で、3月までのワクチン供給量はファイザー2400万回分、モデルナ1700万回分を確保、さらに政府が在庫として抱えているモデルナ500万回分を追加配布することが記載されている。

 オミクロンにも有効だとされるファイザーからいかに前倒ししてワクチンを確保するかが重要になってくるが、そのファイザーからの追加分については資料に記載はない。官邸関係者はこう説明する。

「ファイザーと前倒し供給の交渉はうまく行っていません。『ワクチン供給量の中で』『できる限り』などと留保のたくさんついた腰砕けの表現になっているのはそのためです。菅政権のときは官邸が政治主導で動き、ファイザーCEOと首相が会談をするなど成果を出しました。しかし、現在は窓口である木原誠二官房副長官が機能しておらず、岸田首相の出番を作れていない状況です。厚労省に責任を押し付ける形で丸投げしてしまいました」

 同じような状況が新型コロナの経口薬(飲み薬)にも生じているようだ。

 先の資料では、政府はMSD社の経口薬「モルヌピラビル」について、「合計160万回分を既に確保」「薬事承認が行われれば、国内搬入済み20万回分を速やかに現場の医療機関に提供」と説明されているが、ファイザーの経口薬については「『モルヌピラビル』と同量以上の確保について、年内の合意を目指して交渉中」という記載にとどまっている。

「経口薬も確保の見通しが立っていないというのが現状です。ワクチンや経口薬の確保について当初9日に感染症対策本部が開かれ、公表をする予定でしたが、ファイザーとの交渉がうまく行っていないという理由で見送りになっています。丸投げされた厚労省も参っており、政治的な判断はできず、限界が来るのは当然です。こうした状況を打破できない官邸の対応を疑問視する声もあがってきています」

 国民に安心感を与える成果を出すことができるか。早速、岸田政権の手腕が問われている。

(AERAdot.編集部 吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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