所信表明演説をする岸田文雄首相
所信表明演説をする岸田文雄首相
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 新型コロナウイルスの新変異株、オミクロン株に感染した患者の死者が12月13日、イギリスでついに出た。国内でも感染拡大の懸念が高まっている。岸田文雄首相は「できる限り前倒し」にすると表明したが、3回目接種の目途がいまだに経っていない。AERAdot.が独自に入手した内部資料によると、ファイザー社との交渉が暗礁に乗り上げ、前倒しのワクチン確保ができていないというのだ。接種を担う自治体からは、いまだに前倒しの“方針”しか示していない政府に対する不安の声が相次いでいる。

【画像】ワクチン確保の命運を握っているのはこの政治家

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「まだ厚労省からは何も示されていないので、準備のしようもありません」

 こういうのは東京都のある自治体の新型コロナワクチン接種の担当者だ。6日、岸田文雄首相は所信表明演説で、新型コロナの変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大を踏まえ、ワクチンの3回目接種を「できる限り前倒しする」と表明した。しかし、現場には「いまだに具体的な連絡は何もない」(担当者)という。

 12月から各自治体では2回目の接種から8カ月を過ぎた医療従事者などに対する3回目の接種が開始されている。そこに前倒しの接種が始まるとなれば、人員や接種会場の確保など体制を整える必要が出てくる。いつ、どれくらいのワクチンが供給できるのか、というスケジュールも重要になってくる。ワクチン接種を進めても供給が追い付かなければ、 “弾切れ”という事態も懸念される。昨年、職域接種では実際にワクチンの供給が不足し、予約キャンセルされる事態も生じている。

 前出の自治体担当者はこういう。

「前倒しするという方針が首相から出されただけで、誰を前倒しの対象にするのかもまだ具体的には決まっておらず、規模もわからないので、どういった体制にするのかも議論できないていない状況です。前倒しした際に、ワクチンがしっかりと供給してもらえるのかもわかりません。全国の自治体で同じような状況だと思いますよ」

 国民に安心感を与えるためにも迅速な3回目接種は重要な施策だ。しかし、AERAdot.が独自に入手した内部資料によると、ファイザー社との交渉が難航していると記されている。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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政府資料にはファイザー社のワクチン確保の記載はなかった