ただ、「削減」といっても、ファクスから送られてきた文書をPDFなどの電子データに変換し、パソコンで読み取ったり、電子ファイルで相手方のファクスに送信したりできるよう複合機を設定変更するのが基本だ。対応できない機種の場合、リース期間終了時に機種変更しているという。
残る数%はどうなのか。これは主に、区市町村などから届く災害時や救急医療関連の緊急データのやりとりだという。ファクスで送られた文書に直接書き込んで送り返す必要がある場合、紙のままファクスで送った方が迅速に対応できるからだ。
金融機関もファクスを活用している。金融機関向けの情報サービスを手がける調査会社の東京商工リサーチによると、「金融機関はデータ流出のリスクを避けるため、外部とネットを介したやりとりを制限し、あえてファクスを使っています。誤送信を防ぐため、必ず複数人で番号をチェックした上で送信ボタンを押します」という。
■手書きの伝票がネック
小売業界は「ファクスを介した受発注確認」がネックとなり、在宅勤務を導入しにくい面もある。コロナ禍のリモートワークの状況を調査した労働政策研究・研修機構の荻野登リサーチフェローは「取引先が中小企業の場合、手書きの伝票のやりとりが多く、その送受信にファクスを使っています。手書きの書類や伝票処理もPDF化してパソコンで送受信することも可能ですが、中小企業ではこうした対応も含めたデジタル化の遅れが従業員に出社を促す要因の一つになっています」と話す。
一方、都内のリース会社からは、ペーパーレス化の流れでコピー、ファクス、プリンター、スキャナーという複合機の四つの標準機能のうち、ファクスとコピー機能をあらかじめセッティングしないオフィスも増えている、と聞いた。
ファクスとの付き合いも終わりが近づいている。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2021年12月20日号
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