■人生めちゃくちゃに
職員に「痛い」と訴えても、鎮痛剤を出し「我慢して」と言うだけ。針で刺されるような激痛で眠れず、夜中に部屋のドアをたたくと、懲罰房に5日間入れられた。不安と恐怖から、うつ症状を発症したという。
意を決しハンストを行い、ようやく仮放免が許可された。すぐ住まい近くの病院で診てもらうと、がんと診断され緊急手術で患部を摘出。だが、がんは他の部位に転移し、今は抗がん剤の治療に専念している。抗がん剤による副作用で体調はすぐれず、支援者や親族からの援助で何とか生活できていると話す。
「入管に人生をめちゃくちゃにされました」(男性)
こうした事態を入管はどう考えているのか。牛久入管と東京入管は、適切な処置はしているとした上で、
「個別の事例や事案にはお答えできない」などと回答した。
入管の収容期間は事実上、入管当局の裁量で決められ、理論上は無期限だ。そうした中、収容されていた人は、「人間扱いされなかった」と口をそろえる。埼玉県に住むロヒンギャのミョウチョウチョウさん(36)もそんな一人だ。言葉を振り絞る。
「私たちは犯罪者じゃない」
15年前、祖国ミャンマーでの政治弾圧から逃れ来日。今年4月までの約1年4カ月、東京入管に収容された。
■ここで死ぬと入管喜ぶ
何よりつらかったのが、先の見えない収容生活だ。仮放免を申請して却下されても、その理由を教えてくれない。
「何で却下された? 身元保証人もいるのに何で?」
と職員に聞いても、
「私たちにはわからない」
としか答えない。
ミョウさんは、日本に助けを求めに来た。難民申請を繰り返しながら、日本で平和に暮らした。だが、日本政府は難民として認めてくれないばかりか、在留資格も認めてくれない。そうした中、突然、理由もわからないまま収容された。いつ出られるかわからない不安から、体重が一気に減った。体調も崩し、心臓が苦しくて息ができなくなったこともあった。医者に診てもらいたいと申請すると、非常勤医師が診察してくれたのは3週間後。しかも、医師は触診もせず薬を出しただけ。絶望から何度も死のうと思ったと話す。