「運動には、中等度のうつ病の治療において抗うつ薬と同程度の治療効果があるという研究結果がありますし、再発防止効果は抗うつ薬より高いことも示されています。運動によって睡眠の質も良くなり、以前は耐えられなかった負荷に対して、楽に耐えられるようになる。これは、体と心両方に当てはまります」(櫻澤さん)

 朝食の重要性は、すでに述べた通り。栄養バランスに富んだ内容であれば理想的だ。中でも月経がある女性は、赤血球の成分ヘモグロビンを作るために必要な鉄分が欠乏しやすく、貧血から疲労感や、頭がぼーっとする、集中力や持続力が途切れるなど、うつに似た症状が出やすい。これを「鉄欠乏性貧血」というが、その回避のために、朝からしっかりと鉄分が取れる食事を心がけたい。

■専門家につなげる行動

 たばこに関しては、ニコチンの作用で脳からドーパミンが放出され快感が得られるが、一時的な作用。ニコチンが切れるとイライラや集中力低下といった心身の不調が起こる。たばこが原因の心身の不調を、たばこで解消する悪循環に陥る。禁煙でうつ病リスクを非喫煙者と同程度まで下げられることも分かっている。

「ABC全てを一度にできなければ、一つずつできることを増やしていくのでもいい。テレワーク明けをきっかけとし、『始める』ことが大事です」(同)

 とは言え、テレワーク明けのメンタル不調が深刻な場合は、産業医や職場のメンタルヘルス対策に精通した医師の治療が必要だ。自分ではそれが判断できないことも珍しくない。周囲に「もしかして」と思う人がいたら、あなたが、専門家へとつなげる行動を起こすべきだ。(ライター・羽根田真智)

AERA 2021年12月20日号