◆ 甘えてもボス猫として威厳のある態度で
実はニャジラと出会った時には、自宅でニャジラを飼おうと思っていませんでした。
元々、動物好きですが、医師の仕事が忙しすぎて十分なケアができそうにないこと、犬・猫アレルギーもあったからです。しかし、家猫は難しくても、地域猫として夫婦で見守ることはできるのではないかと考えました。
ちょうどそのころ、流行したのが新型コロナウイルスです。私も自宅と職場の往復以外にすることがなくなり、自由に使える自分の時間ができました。奇しくもコロナにより、外の猫の世話ができる余裕ができたのです。
ただし、無責任なかわいがり方をしたり、単なる餌やりさんになったりしないよう気を付けました。主な世話は、誰かが与えた餌の食べ残しや汚れやゴミの清掃、猫が食べない餌の廃棄など、生活環境を整えてあげることに終始していました。猫好きな人が設置した猫用シェルターも清掃し、毛布なども準備しました。
ニャジラはプライドが高く、私たちとの距離を詰めて甘える仕草を見せるものの、数分も経つと根城(ねじろ=行動の根拠地)に戻っていきました。ボスとしての威厳のある態度をとっていたのです。
そんなニャジラが去年9月、後ろ脚を引きずっていることに気づきました。外から侵入した猫とけんかをしてけがをしたのです。
しばらくして正常に歩けるようになりましたが、ジャンプをしなくなり、木に登らなくなったことから、脚に後遺症があるようでした。それでも、猫同士のけんかの仲裁などで“キレた”時にはすごい勢いで走っていましたから、日常生活には支障はなかったようです。
けんかの後の9月後半、ニャジラは仲間を引き連れて、私たちのアパートの敷地内に根城を移したのですが、食欲が落ちて、疲れた顔を見せることが多くなりました。カリカリを与えても、左側の歯を使わずに咀嚼するようになってきたのです……。
妻と2人で気にして、「今日、ニャジラはいた?」「今朝は居た」「今晩、カリカリを少し食べた」というような会話を毎日していました。