飼い主さんの目線で猫のストーリーを紡ぐ連載「猫をたずねて三千里」。今回お話を聞かせてくれたのは、上海の医療機関に勤めている50代の医師、コダマさん。自宅アパートに隣接する公園に暮らすボス猫と心を通わせ、怪我(食欲不振)を機に家に迎えました。
【写真】ボス猫は見かけによらず甘えん坊…実は人間の膝枕が大好き
* * *
私は医師として2019年より中国・上海で仕事をしています。
上海の自宅アパートは大きな公園が隣接していることもあり、以前からたくさんの野良猫が近くに暮らしていることに気付いていました。
毎日顔を合わせているうちに、それぞれの猫の特徴や性格がわかるようになってきたため、1匹1匹に勝手に名前をつけるようになりました。
その野良猫のグループの中に、ひときわ体が大きく落ち着いた、ふてぶてしい茶白柄の猫がいました。誰が見ても“一番偉いな”とわかるような佇まい。その一方で、妙に愛嬌があり憎めない性格をしている。私はすぐに虜になり、「ニャジラ」と名付けました。
名前は、高校生のころに読んでいた小林まことの漫画『What’s Michael?』に登場する最強の雌猫「ニャジラ」から。初めて会った瞬間に「あ、ニャジラがいる!」と思ったのです。
当初は中国での野良猫との共生ルールが解らないこと、無責任な餌付けは避けるべきとの認識で“観察”するだけに留まっていましたが、ある時期からニャジラの方から私に興味を持って近付いてくるようになりました。朝晩の通勤の際に向こうからあいさつに顔を見せ、目の前で撫でてもらうために寝転がったり、体を寄せて自分の臭いを擦り付けてきたり。そうなると情もどんどん湧いて、世話をはじめ……。
昨年12月20日、私たち夫婦はボス猫であったニャジラを家猫にして、“誕生日”とました。まもなく1年が経つのですが、じつはニャジラは現在、動物病院で闘病中なのです。
ニャジラの身に何が起きたのか…。振り返ると、彼に対する私たち夫婦の気持ちもずいぶん変化し、彼との出会いが私たちに多くのことをもたらしてくれたことに気づきます。仲間思いのニャジラ、私たちが愛してやまないニャジラの“生きた証”を残したく、また地域の保護活動について知らせたくて、このコーナーに応募しました。