加隈先生の愛猫トム君。高齢で鳴くことが減り、寝る時間が長くなった
加隈先生の愛猫トム君。高齢で鳴くことが減り、寝る時間が長くなった

 うなだれた私はの鳴き声の真相を探るべく、帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科准教授の加隈良枝先生を訪ねた。加隈先生は、応用動物行動学、人と動物の関係学などが専門だ。現在は、オス猫のトム君(17歳)と暮らしている。加隈先生が話す。

「単独で暮らす習性の猫は、犬のように集団で暮らす動物とは違い、もともとあまり鳴きません。鳴いて仲間に危険や食べ物のありかを知らせる必要がないからです。猫が他の猫に対してコミュニケーションの目的で意味のある鳴き声を発するのは、発情したときやケンカのときくらいです」

 そうした習性がありながら、飼い主に向かって鳴くのは、子猫の頃、母猫に空腹を訴えたり、ぬくもりを求めたりしていた名残ではないかという。

「たまたま声を出したときに飼い主さんに気づいてもらえて、要求が通ったことを学習した可能性があります。その成功体験から、要求があるときには鳴いて訴えるという行動につながっているのではないでしょうか」

 そして、猫が鳴くたびに飼い主が要求を満たすと、成功の記憶が強化されていく。つまり、猫が人をしつける状態になる。

 飼い主が満たせる範囲の要求であればいいが、困るのは深夜に大声で鳴かれたり、長い時間、理由がわからないまま鳴き続けられたりするときだ。

 問題行動を解決するには、「要求を満たさずに無視すること」と加隈先生はアドバイスする。

 猫には人間の行動や言葉の意味はわからない。鳴き声に反応していると、鳴けば要求が満たされる部分だけが記憶に残り、問題行動が強化されてしまう。防ぐには、飼い主はぐっと我慢し、知らぬふりをするといい。かなりの根比べになりそうだ。

 ただし、高齢猫では注意が必要だ。認知症が関係していることがある。

「認知症の猫は、飼い主に訴えるでもなく、昼夜を問わず鳴き続けることがあります。その場合は、おそらく他の症状も出ているでしょう。薬で落ち着かせる対処法もあるので、動物病院に相談してみてください」

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