■融通(ゆうずう)が利く
別々のものが溶け合って一体となる意味の仏教語

「融通」はもともと、仏教語で別々のものが溶け合って一体となることです。そこから、滞りなく通じること、さらには金銭などをお互いの間でやりくりすることの意味になりました。また、その場その場で臨機応変に対処することの意味もあり、そのような人を表す場合には「融通が利く」のように用いられます。

■気障(きざ)
気にかかる意味から気取って嫌みなことヘ

「気に障(さわ)る」という意味の「気障り」が省略化された言葉です。もともとは、気にかかることや不快な感じを起こさせることの意味でしたが、やがて特に服装や態度、ものの言い方などが気取っていて嫌みなことを表すようになり、今ではもっぱらこの意味で用いられています。

■阿漕(あこぎ)
阿漕ヶ浦の海岸に強欲であくどい漁師がいた

三重県津市の阿漕ヶ浦という海岸が由来です。その海岸は、かつて伊勢神宮に供える魚をとるための漁場だったので、一般の漁は禁止されていましたが、ある漁師が密漁を繰り返し、やがて捕まったという話が謡曲や和歌に残されています。そこから、しつこくずうずうしいことや、強欲であくどいことを阿漕というようになりました。

■ろくでなし
「ろく」に、「真面目」の意味がある

「碌でなし」とも書かれますが、「碌」は当て字です。本来は「陸でなし」と書きます。「陸」はもともと、水平なことや平坦なことの意味で、転じてゆがみなく正しいことやまっすぐなこと、さらにはきちんとしていることや真面目なことの意味になりました。そこから、打ち消しの語を伴った「陸でなし」は、役に立たない者や普通以下の者を表すようになったのです。なお、「陸」を「ろく」と読むのは、仏教語などに多く見られる呉音です。

監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)
文/美和企画
※『みんなの漢字』2018年1月号から