その後、「原則8カ月以上」としている2回目との間隔を例外的に「6カ月」に短縮できる判断基準を公表しました。この中で「クラスターが発生した病院や高齢者施設の利用者などで勤務者も含む」と限定しています。つまり、「6カ月」で打ってよいケースは高齢者施設などでクラスターが発生したときに限る、というのです。これは本末転倒です。私たちはクラスターを防ぐために21年内の3回目接種を進めるわけですから。

 科学的根拠の提示もなく、「8カ月」を突き付けるのは江戸時代の「お触れ書き政治」を彷彿(ほうふつ)させます。「8カ月のお札が見えんのか」と。前倒し接種を阻むのは、21年4~5月頃に、総務省が7月末までに高齢者接種を終わらせるよう首長に圧力をかけたのと真逆。前倒しを急ぐ世界の潮流にも反します。

 憲法改正論議で緊急事態条項の創設も挙がっています。しかし、いま必要なのは上から押しつける力を強めるのではなく、国で考えたことも、現場の声に照らして速やかに修正するレジリエンスの力です。そのためには国の側の「聞く力」がもっと早い段階で不可欠です。

(編集部・渡辺豪)

AERA 2022年1月3日号-1月10日合併号

[AERA最新号はこちら]