子どもへの「10万円給付」と3回目のワクチン接種時期で、政府の方針は二転三転。その度に振り回される地方自治体のトップはどう思っているのか。保坂展人・東京都世田谷区長に、政府の対応について聞いた。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。

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18歳以下への10万円給付について、政府はもともと先行分の5万円を現金で、追加の5万円をクーポンで支給するよう制度設計していました。2021年12月3日に政府が自治体向けに配布した資料では、全額現金給付が認められるのは、「22年6月末までにクーポン給付を開始できない場合に限る」と説明していました。追加の5万円相当の給付の趣旨については「22年春の卒業・入学・新学期に向けて、子育てに係る商品やサービスに利用できる」としています。
これを聞いて矛盾を感じました。「22年春の卒業・入学・新学期」のためというのであれば、遅くとも22年2月までに支給しないと間に合いません。
世田谷区は21年内に全額現金給付しますが、そもそも2月末までにクーポンを発行するのは無理な話でした。対象商品や業者選定などに時間がかかる上、クーポンの印刷経費に2億円以上かかります。一方、現金給付にかかる経費は500万円未満。これらを勘案し、クーポンの利点はないと判断しました。
■一度決めたら変えない
しかし国は当初、大阪市が一括給付のために財政調整基金を充てる意向を示すと、予算措置しない姿勢をほのめかすなど、自治体の裁量を制限しようとしました。国は一度決めたことを変えたくないので判断が遅れ、その迷走のツケは自治体職員が払わされています。
ワクチンの3回目接種をめぐって世田谷区は、高齢者施設での前倒し接種を厚生労働省に再三申し入れていました。2回接種後、抗体価の減少が顕著なデータを入手していたからです。区内1千カ所近くの施設に医療チームを派遣してワクチンを打つには数カ月かかり、準備も急ぐ必要があります。しかし、厚労省からは、なしのつぶてでした。