そこに、オミクロン株が登場し、さらに必要性が高まった。ブースター接種を行えばオミクロン株に対しても中和抗体が増えるため、発症や重症化、再感染を防ぐ効果も回復すると考えられている。

 多くの国は、オミクロン対策としても、早くブースター接種を受けるよう国民に呼びかけている。英国はワクチン接種2回完了からブースター接種までの期間を、それまでの6カ月以上から3カ月以上に短縮した。接種対象も、それまでの40歳以上から18歳以上に拡大した。

■ワクチン持たざる日本

 ブースター接種が進むイスラエルでは、60歳以上の高齢者らに対しては、2回目のブースター接種、つまり4回目の接種を始めると決めた。

 ブースター接種以外のオミクロン株対策は、国によって異なる。オランダのようにロックダウンに近い厳しい対策を再び取った国がある一方、英国や米国は、厳しい対策は取っていない。英国は、オミクロン株の市中感染の広がりが明らかになった時点で、水際対策も緩和した。

 英国や米国が厳しい対策を再び取らない背景には、政治的な要因も含めいろいろな理由があるが、一つは、ブースター接種を進めれば重症化する人はさほど増えず、医療は崩壊しないだろうという考えがある。

 日本は、英国や米国のようにはできない事情がある。ワクチンを「持たざる」国だからだ。

 国内では、12月1日に医療従事者に対するブースター接種が始まったばかりだ。政府は当初、ブースター接種の対象を2回の接種完了後から8カ月以上経った人としてきた。オミクロン株の登場により、そのスケジュールを前倒しにするとした。

 しかし、必要なワクチンの輸入見通しが立たず、全国民はもとより全高齢者に対しても広くブースター接種を前倒しにすることができないのが現状だ。

■抗体価どれも10倍以上

 政府は、ブースター接種にはアストラゼネカ社製は使わず、m(メッセンジャー)RNAワクチンを使う方針だ。現在、mRNAワクチンの在庫は3800万回分しかない。全高齢者に前倒し接種するには4100万回分が必要なので足りない。このため、前倒しはクラスター発生リスクの高い施設の高齢者らに限定することになった。

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