オミクロン株は、ゲノム(全遺伝情報)の50カ所以上に変異が入っている。そのうちの32カ所の変異が「スパイク(S)たんぱく質」の遺伝子に集中している。
Sたんぱく質は、ウイルスの表面にある突起状のたんぱく質で、感染する際にまずここがヒトの細胞と結合する。ファイザーやモデルナのワクチンは、接種後にSたんぱく質に対する抗体ができるよう設計されている。
このため、Sたんぱく質にこれだけたくさんの変異が入っているオミクロン株に対して、ワクチンは効果が下がるとみられている。
英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームはワクチンの発症予防効果を推計した。
■再感染リスク3.3倍
ファイザー製ワクチンの接種を2回完了してから2週間以上経った時点での発症予防効果は、デルタ株に対して55.9%なのが、オミクロン株に対しては0%になると推計された。ブースター接種後2週間以上の時点ではデルタ株に対して88.6%、オミクロン株に対して54%と推計された。
この推計に使われたのは同大の集計するデータだ。研究チームが別のデータで推計すると、もう少し効果は高く出たが、いずれの場合も、オミクロン株に対してはワクチンの発症予防効果が下がるという結論になった。
デルタ株の場合、2回の接種から時間が経っても重症化を防ぐ効果は一定程度、残っていると考えられている。オミクロン株にも、重症化を防ぐ効果は一定程度あると考えられているが、実際のところはまだ不明だ。
オミクロン株は変異が多いため、一度感染した人の再感染リスクも高まっている。英国健康安全保障庁が12月17日に発表した報告書によると、オミクロン株は他の変異株に比べ、再感染のリスクが3.3倍高いという。
そもそもオミクロン株の登場以前から、接種完了から数カ月でワクチンの感染や発症を防ぐ効果は低下し、ブレークスルー感染が起きると指摘されていた。このため、イスラエルや欧米、シンガポールなどでは夏以降、ブースター接種を始めていた。