そしてデザートに白玉ぜんざい。これは、初めて行ったときにご主人に「デザートは何がいいですか」と聞かれ、「ぜんざいありますか」とリクエストしたら、「そいつはぜんざい(前代)未聞だなあ」とジョークを言いながら用意してくれました。以来、40年間、毎回食べることに。そのご主人も数年前に亡くなり、娘さんが店を継いでいます。80歳代のお母さんが補佐役です。
どうして、こんなに居酒屋が好きなのか、考えてみました。アットホームな雰囲気といっても、家で飲むのと、居酒屋で飲むのは違うのです。居酒屋にはお店の人がいて、同席するお客さんたちがいます。その人たちが持つ、いのちのエネルギーが私の持ついのちのエネルギーと響き合うのです。うまい酒とつまみ、店のたたずまいが小道具になり、居酒屋の場のエネルギーが高まります。その場に身をおくことで、ときめきが生まれます。
心が落ち込むことがあったら、なじみの居酒屋さんに出かけましょう。きっと、あなたのいのちのエネルギーを、回復させてくれるはずです。
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中
※週刊朝日 2022年11月4日号