『ワンランク上の大学攻略法――新課程入試の先取り最新情報』
朝日新書より発売中

親ガチャ外れ組からの飛躍

 50年ほど前に新卒で学習研究社(現・学研HD)に入社し、今はなき『高校コース』の編集者になった。読者の高校生に突き上げられ、次の月刊『進学情報』では進路指導部の先生や大学教員にしごかれた。時には大学の学長にもインタビューをした。以来、フリーの立場になった現在でも、主に大学をテーマに執筆活動を続けている。

 そんな中で実感するのは、この50年足らずで大学と入試の実態が大きく変わったことだ。

 私が編集の仕事に慣れてきた頃、1985年は、大学(4年制)進学率は26・1%(男39・3%・女12・3%)で、大学数は国立95校、公立34校、私立384校だった。

 ところが、2021年には進学率は54・9%(男58・1%、女51・7%)と2倍になっている。社会の変化を反映したのか、とりわけ女性の伸びが目立つ。そして、同世代の「4人に1人が大学生」の時代から、「2人に1人」の「ユニバーサル時代」になった。

 大学数も国立こそ(大学院大学を除くと)86校と少し減っているが、公立は98校に、私立は621校に激増している。

 経済成長が続き、18歳人口が増えて進学率が高まると、大学入試が一般庶民の関心事になった。特に1979年に国公立大学入試に共通1次試験が導入され、受験生の自己採点による合否判定で、その大学の入試難易ランクを測る客観的な評価基準ができた。最高難易度ランクによる「東大信仰」がトップ受験生の間で強まり、進学校の多くの生徒たちは、東大合格をひたすら目指した。

 また合格者を複数の公立高校に振り分ける学校群制度が全国的に実施された影響もあって、それまで都立高校が上位を占めていた東大の合格者数のトップテンは、全国の有名私立高や国立高などがとってかわった。さらに医学部ブームも加わって、受験競争は年々過熱した。

 最近は経済力のある家の子が東大に合格できるという「親ガチャ論」まで囁かれている。確かに私立の有名中高一貫校などの進学実績は際立っている。しかし、公立と違い私立はカネがかかる。文部科学省の2018年度の調査でも、その差は歴然としている。

「学校教育費」(付随する諸経費を含む)は公立の場合、中学が41万6883円、高校が84万1461円で計125万8344円。一方、私立になると、中学が321万4314円、高校は215万7153円で、計537万1467円となっている。公立の4倍以上だ。

 東大や医学部などを狙うには、この学校教育費の他にも有名塾や予備校での受験勉強が欠かせない。その費用は、年額平均50万円から80万円にもなる。

 これらの高額な教育費を払える家庭の子でなければ、なかなかトップクラスの難関大学に合格できないのが現実なのだ。難関大学の出身者は高収入を得られるというデータもある。そして、その子どもの世代が受験期を迎え……。なんとも分かりやすい格差の連鎖と固定化である。

 では経済力が十分ではない一般家庭の中高生は、その連鎖の環から抜け出せないのか。そんなことはない。

「狙い目」の大学・学部を、どう見きわめるか

 2021年度から始まった大学入学共通テスト(以下、共通テスト)は、共通1次試験と違って、私立大学の利用も多い。受験生にとって入試の大きな関門となっている。

 青山学院大学のようにほぼ全面的に共通テストを活用する大学や、早稲田大学政経学部など一般選抜の入試に共通テストを課すケースもある。1980年代は、5教科の共通1次を受ける国立大入試と、私立大3教科入試がはっきり分かれていた。今やその時代とは大きく変わっている。

 またその出題も現行の高校指導要領を踏まえ、思考力・判断力・表現力が求められる問題となっている。特に2025年度(24年秋から)に始まる新課程入試の共通テストには、新教科「情報I」が新たに課される。

 最近では国立大学も学校推薦型や総合型(旧AO)選抜による入学者の割合を3割以上5割未満との目標を明らかにしている。小論文や面接などで選考するパターンが多く、一般選抜と並ぶ入試のメインルートとなる。もちろん私大でも、この学校推薦や総合型選抜はさらに拡大している。

 逆に言えば、偏差値で輪切りにされる一般選抜よりも、志望に沿った大学や学部をターゲットにできる。自分の能力を発揮できるキャリアプランを考え、ワンランク上の大学と学部を狙おう。最新の情報を戦略的にリサーチすれば、必ずよい結果をもたらすだろう。