「模範解答」が存在しない質問は、社会の雰囲気の変化をよりくっきりと浮き彫りにしている。
「いずれ総動員が発令されると思うか」という問いに「必ずそうなる」「おそらくそうなる」と答えた人は、66%にのぼった。これは、侵攻開始直後の2月の調査の28%の倍以上の数字だ。
■実態なき編入宣言 「権威」を損ないかねない
部分動員令発令後、多くの男性がロシア国外に逃れようと、空港や国境に殺到している。でたらめな動員でいつ自分が招集されるかわからないという恐怖ももちろんある。だが、それ以上に、近い将来総動員が導入されれば国境が事実上閉鎖され、国外に出られなくなるという危機感も大きいだろう。
偽の「住民投票」と「編入」も、無理に無理を重ねているという点で、部分動員と似通っている。
ロシアへの編入の是非を問う「住民投票」は、ウクライナ東部のドネツク州(自称ドネツク人民共和国)、ルハンシク州(自称ルガンスク人民共和国)と、南部のザポリージャ、ヘルソン両州で9月23~27日の日程で行われた。
賛成が87%(ヘルソン州)~99%(ドネツク州)に達したという結果発表が茶番に過ぎず、何の正当性も説得力も持たないことはいうまでもない。
問題は、4州でロシアが全域を掌握する前に住民投票に踏み切ったという事実だ。ドネツク州でロシアが占領している領域は6割に過ぎない。ザポリージャ州では、州都ザポリージャ市をウクライナ側が掌握したままだ。
本来であればプーチン氏は、4州でロシアが完全に統治できる条件を整えた上で、編入という次の段階に進みたかったはずだ。
これには前例がある。2014年3月、ウクライナのクリミア半島を編入したときだ。ロシア軍が完全に半島全域を掌握し、駐留するウクライナ軍を投降させた後、「住民投票」と「ロシアへの編入」という手続きに進んだ。
なぜ、不完全なことがわかった上で4州の編入手続きを強行したのか。