はにゅう・ゆづる/1994年生まれ、宮城県出身。プロスケーター。2014年ソチ五輪・18年平昌五輪で金メダルを獲得。22年、北京五輪に出場(撮影/蜷川実花)
はにゅう・ゆづる/1994年生まれ、宮城県出身。プロスケーター。2014年ソチ五輪・18年平昌五輪で金メダルを獲得。22年、北京五輪に出場(撮影/蜷川実花)
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 プロ転向会見から1カ月半後の9月初旬、AERAの独占インタビューに応じた羽生結弦さん。「マグロみたいですね」。その言葉の背景には、スケートと周囲へのまっすぐな思いがあった。AERA 2022年10月10-17日合併号から。

【写真】まっすぐな視線で…蜷川実花が撮った羽生結弦はこちら

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 いまだに心身を休める時間はないという。追求し続けることをやめないこの人らしいなと思って、「厳しい環境にいないと生きていけないんですか」と冗談交じりに聞くと、笑いながら語ってくれた。

「マグロみたいですね。死ぬまで泳ぎ続ける、みたいな。でも、本当にそう思います。捻挫して、何カ月も滑れない時期もいっぱいありましたけど、生きている感覚がなかったですもん、やっぱり。スケートをやって、何かしら感情を表現して、苦しくて、つらくて。僕はぜんそく持ちなので、本当に息ができなくなる瞬間もありますけど、それがないと、やっぱり生きている心地がない。スケートをやっていて『生きてる』と思うことは、よくあります。

 今、こうして苦しいことで生きているなと思えるのは、たぶんその苦しさの先に、ちゃんとみんなが褒めてくれたり、何かしら結果が出たり、という体験が続いたからだと思うんです」

 向上心は相変わらず。やると決めたことに対して手を抜くことはしない。今回の撮影では、用意された衣装を興味深そうに観察し、それらを着るたびに体や手足の動かしやすさを確認していた。作り上げようとしているショーで身につける衣装のヒントを得ようとしているのか。過去にはそのような姿はあまり見たことはなかった。新たな道を模索する羽生結弦の姿がそこにはあった。

 ただ、次のステージの準備をしながら、さいなまれる感情があるという。

「こうやってプロになって、ファンの方々がそのままついてきてくださるかというのは、正直めちゃくちゃ怖いですし。自分に自信があるかと言われたら、正直それもない。怖い気持ちは常にあります」

■努力は常に積んでいる

 これまでも、不安になることはあっただろう。

 しかし、どんな厳しい状況であっても、勝負どころでは無類の強さを見せてきた。むしろ、厳しい状況であればあるほど、強さを発揮してきたと言える。氷に乗ってしまえば、自分はできる、やるんだと信じきることができた。

 それは、自覚するところでもある。その感覚を言葉にした。

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