一方で、今安さんは「3Dを制作する前から、貞子というキャラクターは一人歩きしていた」とも話す。
「バラエティー番組に出たり、いろんな方がパロディー化したり、愛される存在としての土壌はできていたんです。好き放題やっているように思われるかもしれませんが、『リング』のブランドを守りつつ、みなさんに楽しんでもらえる道を模索しています。原作の鈴木光司先生は、貞子を“孝行娘”って呼んでいて。孝行娘が多くの方に育ててもらい、広い世界に羽ばたいていけるよう、親戚のおばさんぐらいの感じでサポートできればと思っています」
では、“親”である鈴木さんは、現状の娘の姿をどう受け止めているのか。本人に聞いてみた。
「これはいい感じだなあって。シリーズを長期的に続けるためには、コメディーの要素は絶対必要。ホラーだけでは飽きられちゃうからね。1998年に『リング』を見た人たちは『なんじゃこりゃ、全然ちがうじゃないか』って言うかもしれないけど、かわりにまた新しい若いファンがついてくる。これでいいと思うんだよ。新陳代謝しなくちゃ。小説版とちがって、映画シリーズにテーマや小難しい話はない。ジェットコースターに乗った気分で楽しんでもらいたいっていうのがコンセプトだな」
実は鈴木さん、元からホラーに対する興味はまったくないという。原作小説の『リング』は、映画のようなホラージャンルではなく、ミステリー作品だ。
「小説には幽霊なんか出てこない。非科学的なものが大嫌いなんで。だけど、世間に貞子が定着したのは映画のおかげだと思うから、大感謝してるよ」
それでも、「貞子を出しすぎないように」というオーダーは、新作映画がコンスタントに作られる今も一貫している。「幽霊が出た瞬間、人間の想像力はシャットダウンする。出そうな雰囲気だけを作りあげて、想像力を刺激するのが一番怖い」というのがポリシーだ。
そんな鈴木さんにも、想像して恐ろしくなるものがあるのだとか。