■NISA恒久化と引き換えの増税シナリオとは
一方、NISAの恒久化と引き換えにした「ネガティブシナリオ」もある。増税だ。原氏は「金融所得課税が強化され、株式や投信の値上がりや配当に適用している一律20%の税率を引き上げる可能性があります」という。
というのは、株式や投資信託の利益には2003年から10%の軽減税率が適用されていたが、2014年1月に20%に戻された(2013年から所得税に復興特別所得税が追加)。NISAは、株式や投資信託の軽減税率を20%に戻す際、バーター的に誕生した経緯がある。
岸田首相は金融所得課税について、5月27日の衆院予算委員会で「(議論が)終わったわけではない」と答弁し、6月13日の参院決算委員会では「論議を続けていきたい」と述べている。NISA拡充と引き換えの増税リスクが意識されるのも当然だろう。
税制改正要望をたたき台に、霞が関では9月から各省庁と税当局の熱い戦いが展開されている。12月の税制改正大綱までに政治判断も加わるため、予断を許さない。
※本記事は2022年10月1日現在の情報を元に執筆されています。10月4日、政府税制調査会総会で、所得額1億円を境に税の負担が低下する、いわゆる「1億円の壁」について取り上げられました。金融所得課税の強化に関する議論が再燃していることで、年末の税制改正にさらなる注目が集まっている状況です。
取材・文/海川昌司 編集/中島晶子(AERA編集部)
※AERAオンライン限定記事