■NISAの資産所得倍増プラン、二つの誤解

 ここで、資産所得倍増プランのNISAに関する、ありがちな二つの誤解を解いておきたい。

 一つ目。制度自体の恒久化とは「投資可能期間がつみたてNISAは2042年まで、新NISAは2028年まで」という“最終締め切り”のようなものをなくしてほしいという意味が最も近いと思われる。

 恒久化=非課税で保有できる期間(つみたてNISAは20年、新NISAは5年)を永久に延ばしてほしいという意味ではないようだ。

 むしろ「非課税期間の延長」の要望のほうが、非課税で保有できる期間を、永久とまでは言わないにせよ延ばしてほしい、という趣旨に近い。岸田首相の「制度自体の恒久化」という発言に対し、SNS等で「恒久化宣言が出た、これでずっと利益に税金がかからなくなる!」といった解釈が流れていたため、勘違いしないようにしてほしい。

 二つ目。そもそも金融庁などからの税制改正要望の時点で、「もう、正式に決まった」かのような発言をする人がいるが、間違いだ。

 税制改正要望は各省庁から政府への「お願い」を取りまとめたものにすぎない。必ずしも政策が実現するわけではない。

 たとえばゴルフ場の利用税に関し、2000年以降、文部科学省は廃止を求めてきた。数あるスポーツの中でゴルフだけが課税されているためだ。

 長きにわたって「お願い」したが税廃止は実現せず、2020年、2021年は「税制の在り方」を見直すように“作戦変更”。これもかなわなかった。ついに今夏、税制改正要望からゴルフ場利用税に関する項目は消えた。

 NISAにまつわる税制要望も、わかりやすい言い方をすれば「頼めることは全部頼んでおこう、実際にどこまで聞いてもらえるかわからないけど」というイメージである。

 冒頭で述べた、岸田首相のニューヨーク講演の話に戻ろう。この講演で、ちょっと引っかかる部分がある。というのはNISA制度の恒久化に強い意欲を示しながら、年間非課税枠の引き上げや非課税期間の延長には触れていないのである。

 まずは制度の恒久化だけを決めて、年間非課税枠の引き上げなどは先送りにされる可能性が捨てきれない。

 SMBC日興証券の原貴之シニアアナリストは「すでに口座を持っている人にとって年間投資枠の拡大は朗報です。長い目でみれば、非課税期間の延長が好ましいでしょう」と語った。

 確かに、すでにNISAを始めている人にとって制度自体の恒久化は、さほど意味がない。たとえば2042年で終了予定の投資可能期間が延長されるなら、引き続き投資信託をつみたてることができるので、まだ喜ばしいのだが。

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NISA恒久化と引き換えの増税シナリオとは