岸田文雄首相は9月22日、ニューヨーク証券取引所で講演し、NISA(少額投資非課税制度)の「恒久化が必須だ」と述べた。かねてから掲げていた「資産所得倍増プラン」にもう一歩踏み込んだ形だ。
【グラフ】一括投資と積み立て投資を比較!プラスになったのは?
金融庁は資産所得倍増プランに呼応する形で、8月に財務省へ提出した税制改正要望にNISA制度拡充を盛り込んだばかり。しかし証券業界には警戒感が漂う。
NISAは株式や投資信託の値上がり益、配当(分配金)を非課税とする投資優遇制度。英国のISA(Individual Savings Account=個人貯蓄口座)の制度をお手本に、2014年1月にスタートした。
2022年3月末時点で1699万口座(一般NISA、つみたてNISAの合計)が開設されている。制度創設からの買付額は27兆699億円にも上る。※金融庁「NISA口座の利用状況調査」から
特につみたてNISAは口座総数の3割近くを30代が占める。証券会社にとって、これまで縁遠かった若い顧客と長い付き合いを始めるための有力な“入り口”であり、NISA制度の整備は入り口の拡大につながる。
ただ、NISA――特に一般NISA(2023年12月で購入期間は終了)の使い勝手は決して良くない。株式やETF(上場投資信託)、通常の投資信託を買ってから5年間は利益が非課税になるが、そもそも非課税で保有できる期間が5年というのは短すぎる。
非課税期間5年を経た後に引き続き保有できるロールオーバーの仕組みも複雑で、投資ビギナーは理解に苦しむ。
低コストな投資信託をコツコツと購入するつみたてNISAは、一般NISAよりシンプルだが、年間非課税枠上限が40万円に制限される。
つみたてNISAの投資可能期間(積み立てられる=投資信託を買える期間)は2022年1月に開始した人で21年間。「投資信託を買ったあと、非課税で保有できる期間」は20年間だ。
人生100年時代、20代からつみたてNISAを始めれば、働き盛りの40代で、投資可能期間が打ち切られることになる。
現状、つみたてNISAの投資可能期間は2042年12月まで、一般NISAの後に始まる予定の新NISAは2028年12月までだ。
そこで証券業界はNISA創設当初から制度自体の恒久化と年間投資枠の拡大、非課税期間の延長を金融庁に要望した。「貯蓄から資産形成へ」の旗を振る金融庁も税制改正要望に盛り込み、証券業界と二人三脚でNISA制度の充実を求めている。