ジャーナリストの田原総一朗さんは、日米同盟を維持するなら日本経済の復活が不可欠だと指摘する。
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現在の日本の大問題は、安全保障と経済の劣化、そして少子化である。安全保障と少子化については後に書くことにして、今回は経済の劣化について書きたい。
今の若者たちにとっては信じられないかもしれないが、1980年代、日本はジャパン・アズ・ナンバーワンと称され、日本経済は世界でもっとも繁栄し、活性化していた。どんどん新しい製品を作り上げ、主に米国に輸出した。そのために米国は貿易赤字となり、経済も悪化した。
当時は米ソ冷戦時代で、米国の敵はソ連だったはずだが、ソ連の経済はすでに弱体化していて、米国のレーガン大統領は「敵は日本だ」と決めつけ、日本経済を弱体化させるためにあらゆる手段を駆使した。たとえば、当時蔵相であった竹下登氏をニューヨークに呼びつけて、「なぜ、日本はこれだけ米国に輸出できるか。それは円が安すぎるからだ。何としても円高にせよ」と命じた。
後に竹下氏に聞いたのだが、当時、円は1ドル=240円台で、「200円くらいにするのはやむを得ないと考えていたが、あっという間に150円台になってしまった」と困惑しきって言っていた。
プラザ合意による円高不況である。ところが、レーガン大統領は「日本が米国にどんどん輸出するのは、内需拡大ができていないからだ」と言い、強引に内需拡大させようとした。日本はすでに内需拡大ができていたので、米国の強引な命令によって、悪性のバブル景気にさせられた。そして、そのバブルがはじけて大不況となった。
当時の中曽根康弘首相に「なぜ、日本はこんなにも米国の無理難題に応じなければならないのか。なぜ拒否できないのか」と問うと、「指摘はもっともだが、日本は安全保障を米国に委ねているので、拒否できないのだ」と答えた。
当時の米国は世界最大の強国で、世界の平和は米国が守る、つまり世界の警察であることに米国民たちは使命感を持っていた。