(photo 田中聖太郎)
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 この日、紡いだのは全16曲。音楽学校で出会って以来の付き合いというギターのカンノケンタロウとのMCでは、

「ずっと路上ライブを二人でやってたんですけど、誰一人として足を止めることはなかった。ただの練習になってましたね(笑)。今は、受け止めてくれる人がいることにマジで感謝です!」(松下)

 そう言ってから、「あなた」「One」の2曲をアコースティックアレンジで伸びやかに歌った。しっとりとした松下の声が心に染み入るのを感じながら、彼の歩んできた道と努力に想いを馳せた人も多かったかもしれない。

学生時代から、ともに音楽活動を続けてきたカンノケンタロウと2人でのステージでは「15年前とやっていることは変わらないけど、会場がこんなに大きくなった」と語った(photo 田中聖太郎)
学生時代から、ともに音楽活動を続けてきたカンノケンタロウと2人でのステージでは「15年前とやっていることは変わらないけど、会場がこんなに大きくなった」と語った(photo 田中聖太郎)

 会場がゆったりとしたあたたかな空気で満たされる中、一転し、ダンスナンバーへ。「Way You Are」では心地よい爆音とともに金銀のテープが舞い、「KISS」「FLY&FLOW」で会場の盛り上がりは最高潮に。「みんなが見てる空」では、ピアノの弾き語りも披露し、シンガー・ソングライターとしての魅力を余すことなく発揮した。

■タイトルは決意表明

 今回のライブのタイトル「POINT TO POINT」は「点と点をつなぐ」という意味だ。俳優とミュージシャン。どちらも松下に欠かせないものであり、さらなる高みを目指す──。タイトルは、そのまま決意表明でもあった。最後のMCで松下は、

「俳優のくせに、と言われることも……なくはないです。でもね、いいんですよ。僕は歌を歌うことが好きですし、全然構わないです。胸を張って俳優だと言えるようになるまでに10年かかりました。シンガーだと胸を張って言えるようになるまで、何年かかっても歌い続けることが大切だと思っています」

 と語った。

(photo 田中聖太郎)
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 予定されていたツアースケジュールの中には、延期となった公演もあり、悔しい思いをした日もあったことだろう。最終日まで走り抜け、ステージにマイクを置いて地声で叫んだ。

「ありがとうございました!」

 またひとつ歩みを進めた松下。23年は、俳優業とともに音楽シーンをも席巻しそうな予感がした。(編集部・古田真梨子)

AERA 2023年1月30日号

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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