早稲田大卒業後、会社員を経てプロ入りした瑞原明奈選手。映画好きで、麻雀の魅力を「4人の選択の連鎖が織りなす物語性」と話す(写真:Mリーグ提供)
早稲田大卒業後、会社員を経てプロ入りした瑞原明奈選手。映画好きで、麻雀の魅力を「4人の選択の連鎖が織りなす物語性」と話す(写真:Mリーグ提供)

 これらが併存する麻雀界に大きな変革をもたらしたのが、18年に始まったMリーグだ。麻雀の強者として知られ、「経営と麻雀は似ている」が持論の藤田晋・サイバーエージェント社長が構想。「トッププロ選手がチーム戦で優勝を競う」という新しいコンセプトを打ち出した。

 同社が力を入れる動画配信サービス「ABEMA」で放送するため、見せ方にはこだわる。対局会場として、洗練されたデザインの専用スタジオを設け、選手はスマートなユニホームを着用。麻雀牌や表情が見やすいよう、照明やカメラワークにも工夫を重ねている。

 刺激的な実況や、個性的な選手たちによる解説も好評で、ABEMAでの視聴数は年々増加。21年秋から22年春にかけたシーズンでは、毎試合100万前後を記録し、優勝が決まった4月26日の最終戦では、320万に達した。

Mリーグの放送の一コマ。今年のシーズンは10月3日に始まる。出られるのは2千人以上のプロ雀士の中の32人。狭き門だ
Mリーグの放送の一コマ。今年のシーズンは10月3日に始まる。出られるのは2千人以上のプロ雀士の中の32人。狭き門だ

■MVPは2児の母

 人気に注目した丸善ジュンク堂書店は今年9月、東京・日本橋と大阪・梅田の店舗に「Mリーグオフィシャルショップ」を開いた。各チームのグッズや100種以上の麻雀書籍をそろえ、選手との撮影会などのイベントも企画。連日ファンが訪れている。

 Mリーグで目立つのが、女性選手の活躍だ。Mリーガーは8チームに各4人、計32人おり、うち12人を女性が占める。時に、卓につく4人全員が女性という対局もある。

 昨季、MVPに輝いたのは瑞原明奈選手(35)。レギュラーシーズン21試合に出て、うち18試合で1着か2着。4着(最下位)は2試合だけ、という圧倒的な成績を残した。

 瑞原選手は、7歳の長女と3歳の長男を育てる母親でもある。表彰式では「私が活躍することが、働く女性や戦うお母さんをはじめ、誰かの励みになれたらうれしい」とコメントした。育児や家事で多忙ななか、就寝前などの時間を見つけてネット麻雀で対局し、牌譜を見返すなどして研究を続けている。

 彼女自身も、環境の変化を実感している一人だ。麻雀を始めた15年ほど前は、雀荘に入るたびに驚かれたという。「今は女性がプレーすることが自然な風景になった。新しい世代がこれからさらに変えていくのでは」と期待する。

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