世界の市場混乱が、国内の地方銀行の財務にも影響を及ぼし始めている。国内外の株式や債券といった有価証券の評価額は下がり、含み損を抱える地銀は6月末時点で42行に上る。景気の先行きが読めない中、今後の業績にも影を落とす。
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米国の中央銀行にあたる米連邦準備制度理事会(FRB)は9月21日に開いた会合で「0.75%」の大幅な利上げを決めた。
政策金利を引き上げる利上げはFRBの場合、1回あたり「0.25%」が一般的。その3倍にあたる大幅利上げは6月、7月の会合に続き3回連続で、極めて異例だ。今回の利上げで政策金利の誘導目標は3~3.25%と、14年半ぶりの高い水準に引き上げられた。
FRBがこれだけハイペースで利上げを続けるのは、強烈な物価高(インフレ)に歯止めをかけるため。モノやサービスの値段の水準を示す消費者物価指数(CPI)は8月、前年の同じ月に比べて8.3%上昇した。ガソリンは同25.6%、食品は同11.4%も上がり、米国のCPIは3月以降、毎月8%超の記録的な上昇が続いている。
「任務が完了したと確信できるまでやり続けなければならない」。FRBのパウエル議長は利上げ決定後の会見でこう述べ、物価高を抑え込むための金融引き締めを続ける姿勢を強調した。
金融市場でも、FRBによる利上げが当面続くとの見方が広がり、米長期金利は上昇。指標となる10年物米国債利回りは一時3.8%台まで上がり(債券価格は下落)、約12年半ぶりの高水準をつけた。
金融引き締めが長引けば、景気の腰折れや企業の業績への影響が心配される。FRBの利上げ決定後、日米の株式市場はともに値を下げ、22日の日経平均株価は前日比159円安の2万7153円で引けた。株式や債券の不安定な値動きはこれからも続きそうだ。
市場関係者は言う。
「ロシアのウクライナ侵攻や米中関係の悪化など経済の分断が進む中、主要国の金融当局は金融政策の転換を迫られた。インフレ退治はただでさえ難しいし、時間もかかる。にもかかわらず、経済の分断が進んだことで、これまで築いてきたグローバルの効率的な生産や貿易体制は崩れ、余計に困難さが増した。今回の金利上昇局面はそう簡単には終わりそうもない。運用の仕方もルールも大きく見直さざるを得ない」