14年度の約500万円から始まった五輪招致関連費は年を追うごとに増加。22年度は過去最高の6億円を超える予算を計上する意気込みだった。IOCが開催地を選ぶ際に重視する地元の支持率を少しでも高めるためだった。
■コロナも逆風に
しかし、コロナで目算は狂った。感染拡大で道内全域は1月下旬から約2カ月にわたり、まん延防止等重点措置が適用された。北京冬季五輪への市職員派遣も見送られた。
3月、地元の意向調査が行われた。ふたを開けてみれば、市民への郵送調査、市民・道民へのネットと街頭調査でいずれも賛成派が過半数を占めた。関係者は胸をなで下ろしたが、反対派が全調査で25%以上を占めた。賛成派は8年前の招致アンケート時よりも減っていた。
30年の開催時にコロナのような感染症が再び世界を襲う懸念は払拭できていない。昨年11月、市が公表した大会概要案は経費を2800億~3千億円へ減らす一方、コロナ対応などで予備費は200億円増やした。
朝日新聞社が9月に行った全国世論調査では、30年冬季五輪・パラリンピックの札幌開催について全国では「賛成」が55%、「反対」が38%と賛成の方が多かった。ただ地域別でみると、地元の北海道だけは「反対」が「賛成」を上回った。「市民の五輪への関心は極めて薄い」「まったく熱気を感じない」と複数の自民党系市議がもらすほど招致機運は低調だが、札幌が30年大会の「本命」との見方はいまも強い。
五輪招致を推進する秋元氏は来年4月の統一地方選で改選期を迎える。出馬表明はしていないが、3期目を目指すことは確実視されている。一方、元市幹部の高野馨氏が7月、五輪招致反対を掲げて名乗りを上げた。
30年大会の開催地は年内に内定するとみられていたが、正式決定の場となるインド・ムンバイでのIOC総会が来年5~6月から9~10月に延期された。インドの五輪委の組織問題が理由だが、開催地の内定時期もずれ込みかねない。内定時期に近いタイミングの市長選は、「五輪信任投票」の色彩を一段と強める可能性がある。
(朝日新聞記者・日浦統)
※AERA 2022年10月3日号