北海道新幹線の延伸をにらんで建設工事が進むJR札幌駅の11番ホーム。10月中旬から供用が始まる見込みだ=3月撮影
北海道新幹線の延伸をにらんで建設工事が進むJR札幌駅の11番ホーム。10月中旬から供用が始まる見込みだ=3月撮影
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 コロナ禍に東京五輪をめぐる汚職事件……。30年大会の「本命」の札幌で、熱気が急速に冷え込んでいる。AERA 2022年10月3日号の記事を紹介する。

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 スイス・ローザンヌのレマン湖畔に立つ国際オリンピック委員会(IOC)本部。今月13日、札幌市の秋元克広市長の姿は、そこにはなかった。2年ぶりに同地でトーマス・バッハ会長との会談を模索したが、取りやめになったからだ。

 1972年、日本初の冬季五輪を開催した札幌市は、2030年をターゲットに2度目の招致を目指している。ねらいは人口減と高齢化が進むなかで「次の100年も持続可能なまちをつくる」。市が重視するのが「都市インフラの再構築」だ。五輪を機に建設された地下鉄や大通地下街、高速道が半世紀を経て、老朽化が進む。五輪を再び開催することで民間投資を呼び込み、都市の礎を復活させるというわけだ。

 IOCの理事会で最も影響力を持つのがバッハ会長だ。そのバッハ会長と秋元市長はこれまで3度、顔をあわせている。市幹部は「4年前から2人はじっくり対話を重ねてきた」と、その蜜月に自信を見せていた。

■勝負の一手が空振り

 秋元市長は今年9月中旬、IOC訪問と会談を模索した。4度目の会談は勝負をかけた一手だった。

 がしかし、7月下旬以降、東京地検特捜部による東京五輪をめぐる汚職事件の捜査が一気に進んだ。そのさなかの会談を疑問視する見方も出始めた。市は市長の渡欧直前、IOC訪問の中止を発表。IOCからの申し出によるものだった。IOCは中止と事件との関係は否定し、秋元市長も「今後もIOCとの対話の機会を模索していく」と語った。

 札幌市が2度目の冬季五輪招致に名乗りを上げたのは、2014年11月。1万人の市民アンケートでは66.7%が招致に賛成した。当時、ターゲットは26年大会だった。しかし18年9月に胆振東部地震が発生し、道内ほぼ全域が停電(ブラックアウト)に見舞われた。緊急時の電力網整備の必要性などが課題となったことから、招致を30年大会に切り替えた。五輪の開催地が18年冬の韓国・平昌、20年夏の東京、22年冬の北京と続き、同じアジアの札幌が26年を目指すのは不利だとの観測もあった。

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