バスに焦点を当てると、物理的環境を整えることも具体策の一つ。アメリカや韓国で導入されている置き去り防止装置を搭載することも有効だ。運転手がエンジンを切ると自動的にアラームが鳴り、バス車内の後部のボタンを押しに行く。外から車内が見える窓にすることは基本中の基本で、窓ガラスにラッピングなどはもってのほかだ。子どもたち自身が身を守る術を身につけることも重要。クラクションをお尻で鳴らすなど、子どもの成長に合わせて危機への対応、回避、予知の力をつけさせることが、園に求められている。
これらの具体策を踏まえた上で、園全体に安全意識を根付かせることが、事件事故を防ぐカギとなる。ところが多くの園でヒヤリハットが形骸化しているという。小崎教授は言う。
「ただの事故報告書になっている園も多いです。本来ヒヤリハットとはそういうことではなくて、『危なかったけど何もなくてよかった。今度から気を付けようね』の事例を集めること。ヒヤリハット週間を設けるなど、安全に対する意識や文化をもっと根付かせる必要があります」
子どもの命を守るために、あらゆるリスクを排除しておく必要がある。
「子ども、保育者、環境、文化。いろいろなことを重ねていき、もしもの時に対応できる手数を増やしていく。それが最終的に子どもの命を守ることになるのです」(小崎教授)
(ライター・大楽眞衣子)
※AERA 2022年10月3日号より抜粋