人間としてのあり方や生き方を問いかけてきた作家・下重暁子氏の連載「ときめきは前ぶれもなく」。今回は、「安倍晋三元首相の国葬」について。
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安倍元首相の国葬にかかる費用が十六・六億円だという。最初発表された時は二億五千万円だった。次はいくらになるのだろう。国葬が終わったあとに確実な数字が示されるというが、どんな結果が出るのだろう。
すでに国葬は行われた後だから、その後で文句を言っても後の祭り。結果オーライで国は押し通そうとするし、私たちもなしくずしに納得させられてしまう。
やりきれない。いったい誰が国葬にすると提案したのか。麻生副総裁ともいわれているが、岸田首相はやすやすと押し切られた。
ご本人はほんとうはどう思っていたのだろうか? 声高な主張に押されてのことだろうが、首相には抵抗した跡も見られなかった。
費用の公表の遅さに比べて、あっという間だった。え、国葬? ずっとそんな言葉を聞いたことがなかった。吉田元首相以来のことで、岸田首相は現在最高権力者なのだから、自分の考えで物が決められないわけがない。なぜあんなに早く、国会にもかけず、国民の意向もきかずに決めてしまったのか。私には不思議でならない。その裏には何があるのか?
国葬というからには、国家国民のものであるはず。簡単に閣議決定などで決めていいのか。
まずなぜやるのか。なぜ国葬なのかの説明がなくて、今頃になって「ていねいに説明」といわれても、そりゃ聞こえませぬ!
国民の多くが反対を表明していて、その流れはますます激しくなっているのに……。
その理由は? 他の首相に比べ在任期間が長いといわれるが、長けりゃいいというものではない。長けりゃ迷惑ということもあって、モリカケ問題などは長いからこそ起きたとも考えられる。
外交面といわれても、トランプ前米大統領をはじめ、首脳らと個人的に仲良くして何の成果があったのか。歴代の首相で、たとえば田中角栄元首相が成しとげた日中国交回復などは功績は明らかだ。外国首脳との交流といえば、レーガン元米大統領と「ロンヤス関係」を築いた中曽根元首相がいる。