岸田首相よ。もっと自信を持って国民の声に耳を傾けてほしい。
若者たちに加えて、年を重ねた人々のデモ参加も目立つ。私の早稲田時代の親友は、今も可能な限り国会議事堂前のデモに参加する。私と同じ年だから八十六歳。やむにやまれぬ行動なのだ。
円安に加えて、ウクライナ紛争による世界的物価高騰でみな生活苦にあえいでいる時に。葬儀費用の多くは国民の血税だ。もはや後にはひけないというが、勇気ある撤退には国民が拍手を送るだろう。
こんな状態で国葬が行われたとしたら、むしろ安倍氏のご家族が辛い思いをするのではなかろうか。
私のところにも国葬についてのアンケートがくるが、私は国葬という発想がわからない。やってしまえば、国民は従うという本音が、鎧の下からチラホラ見えている。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年9月23・30日合併号