AERA 2022年9月19日号より
AERA 2022年9月19日号より

 メーカー勤務の夫(43)の年収は約550万円、自身は約100万円で世帯年収は約650万円。夫のボーナスは年々減っているといい、家のローンを返済しながらの生活は決して楽ではない。

「産めばなんとかなる、と信じて妊活してきました。けれど、息子を私立の中高一貫校に入れた場合の家計をファイナンシャルプランナーに相談したら、本当にギリギリだった」

■夫が長生きすると破綻

 文部科学省の「子供の学習費調査」(18年度)によると、塾や習い事などの「学校外活動費」は公立小学校では年間約21万円。競争の激しい首都圏では、より高額になると見られる。私立中学校の学費は年間約100万円だ。女性の資産計画は子ども1人の場合で作成され、夫は80歳で死亡する予定になっている。2人目が生まれたり、夫が長生きしたりすると家計は破綻(はたん)してしまうのだ。女性は北関東出身で中学受験の経験はない。だが、

「きちんと収入の得られる職業の枠が限られていると感じる。そこに入るために、いい大学を出てほしい」

 と考えているという。

 収入が多い家庭の子どもほど学力が高いと言われて久しい。それはつまり、志望校に入るために塾に通うことや、本を読んだり、旅行先で自然に触れたりといった学力につながる様々な「文化的資本」に触れる体験には、お金がかかるということだ。ベネッセ教育総合研究所の木村治生主席研究員は、

「教育費は景気の動向に左右されにくく、一定額支出される傾向があります。やはり親は『子どものため』と頑張るのです」

 と指摘。日本政策金融公庫の「教育費負担の実態調査」(21年)によると、教育費の捻出方法は「節約」と答えた人が28.6%、「預貯金や保険などを取り崩している」と回答した人も18.8%いた。先の女性のように、ぎりぎりで回っている家計の中から教育費を絞り出している人は多い。

 千葉市で「TSUGAnoわこども食堂」を運営する社会福祉士の田中照美さんは言う。

「『貧困』まではいかないけれど、部活はお金がかかるからできない、という話はよく耳にする。今は経験さえも、お金で買う時代。季節の行事、年齢の違う子どもや大人とのふれあいの場も、親がお金を出して意識的に連れて行く必要がある。それができない家庭が増えている」

暮らしとモノ班 for promotion
大人も夢中!2024年アニメで話題になった作品を原作マンガでチェック
次のページ