首都圏を中心に過熱する中学受験。賃金が上がらず、世帯収入が増える見通しがないなかでも、教育費を捻出し、受験に挑む家族は多い
首都圏を中心に過熱する中学受験。賃金が上がらず、世帯収入が増える見通しがないなかでも、教育費を捻出し、受験に挑む家族は多い
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 1億総中流ははるか昔の話だ。いまや中間層は所得減に苦しみ、教育費が重くのしかかる。2人目を産むのを諦めたり、そもそも子どものことを考えられない人もいる。AERA 2022年9月19日号の記事を紹介する。

【25年間で年代別の世帯・所得はどれだけ変わった? グラフこちら】

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 認定NPO法人「キッズドア」(東京都中央区)は、日本の子どもの貧困対策に乗り出した最初の団体のひとつだ。理事長の渡辺由美子さんが任意団体として設立したのは2007年。当時は「子どもの支援」といえば発展途上国のこと。日本に貧困に悩む子どもはいないと思われてきたなかでの船出だった。

 それから15年。政府が子どもの相対的貧困率を公表するようになり、多くのメディアが取り上げるようになった。学習支援や食事の支援をする地域活動やNPOも増えた。13年には子どもの貧困対策法が成立。「生まれ育った環境で将来が左右されることのないよう」にと教育支援に力点が置かれ、日本の子どもたちの状況は改善に向かう──はずだった。日々、多くの困窮家庭に接する渡辺さんは言う。

「住民税非課税世帯など最貧困層への手当てはかなり手厚くなり、学習機会が保障されつつある。裕福で教育投資が十分にできる世帯も一定数いる。けれど、中間の層がどんどん崖の下へ落ちてきている。年々、その崖が大きくなっているのを感じます」

■“子育て世代”が大幅減

 内閣府が集計し、今年3月に公表された資料「我が国の所得・就業構造について」によると、日本の全世帯の所得分布(再分配後)の中央値は、1994年は509万円だったが、19年は374万円。この25年間で、全ての年代で中央値が減少していたが、中でも減少幅が大きかったのは“子育て世代”だ。「35~44歳」は569万円が465万円に。「45~54歳」にいたっては697万円が513万円となり、実に184万円も減少したのだ。

 埼玉県のエステサロンでパート勤務をする女性(41)は、40歳の誕生日にきっぱりと2人目を諦めた。長男(6)に中学受験をさせたいと考えたからだ。

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