佳子:あのときは「何で自分にこれが起きたんだろう」って、とにかく絶望して、どうやって乗り越えていいかわからなかった。でも赤井はすごく前向きだったんです。病院から「次、こうしてみましょうか」と提案されると、私は「いや、やらないほうがいい」とマイナスに考えちゃうんだけど、赤井は「絶対大丈夫だから、やろう」と常に前向きに選択してくれた。
英和:あのときの佳子ちゃんは、本当にズタズタで、ここで俺が弱かったら、もっと佳子ちゃんが悲しくなってしまうからと。気持ちを奮い立たせながらの毎日でした。
佳子:本当は私だって、赤井のことを力づけなきゃいけなかったんです。でも自分が苦しいことだけで精いっぱいだった。何カ月かしてようやく「あ、赤井も同じように苦しんでいるんだ」と気づけたんです。赤井は最初から気づいていて、前を向いていける力があった。そのとき「ああ、この人すごい」って思った。あのときから、私はその後の結婚生活における「貯金」をもらったと思っています。「何かあったら、今度は私が全力で守らなきゃいけない」って思うようになった。
──赤井さんは双子に寄り添った経験を著書『さくらこ ももこ‐わが逝きし子らよ‐』に綴った。二人はいまも家族の心の中に生きている。いま夫婦の歩みは30年目になった。いまもうらやましいほどの円満ぶりだが……。
佳子:もちろんケンカもしますよ。でも赤井はどんな嫌なことがあっても「一緒にいる」って言うんです。「夫婦は一緒にいなきゃ駄目なんだ」って。それに私はツイッターでつぶやくことで客観的になれている部分もあるかな。赤井がパンツ1枚、靴下1足だけ入れて洗濯機を回したりするのを「もったいないよ!」って腹が立っても、その写真を撮っているといったん冷静になって「この人おもしろいよな」ってなるんですよね。
英和:「ごめんなさい」を言うスピードが大事です。オレ、「ただいま」と言う前にドアを開けて、「ごめんなさい」って言うもんね。
佳子:何がごめんなさいなんだかわからないけどね(笑)。
英和:それが夫婦円満の秘訣です。
(構成/フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2022年9月16日号より抜粋