
佳子:英五郎はずっとおとなしかったけど、ボクシングを始めたころから「アマチュアからプロに行ったときって、どんなこと考えていたの?」とか赤井に聞くようになった。「何かに悩んでいるんだな」と思って見ていたけれど、赤井はいつも「いや別に、なんとも思えへんかった」って。
英和:そうやったっけ?
佳子:さっき「まともに話を聞けたの初めてだった」って言ってた。
英和:あちゃ(笑)。
佳子:映画を観て「ああ、やっぱり息子は赤井を尊敬しているんだな」って思った。私の場合は尊敬というよりも「ちょっと変わった生き物の愛護協会・会長」みたいな感じなので。
──「ちょっと変わった生き物」である赤井さんの生態は、佳子さんが20年から始めたツイッター「赤井英和の嫁 佳子」で明かされている。ソファでツタンカーメンのように毛布にくるまって寝ていたり、素っ裸でキッチンで茶わんを洗っていたり。写真とつぶやきのユーモラスさで人気となり、投稿をまとめた『赤井図鑑』も出版された。
佳子:ツイッターを始めたきっかけは、隣の家から聞こえる鳥の声を「なんだろう」と思ったことです。誰かが教えてくれるかも、と声を録音してツイッターにのせたら、「キツツキの仲間のアオゲラです!」と返事がきておもしろい!って。もともと写真は好きで、花や虫や赤井をパシャパシャ撮っていたんです。でも「知らない人が写り込んでいるとダメ」とか、気を使わないといけないと知って。じゃあ赤井だったら大丈夫か!と。
英和:佳子ちゃんはしょっちゅう携帯で写真を撮ってるから、僕も別に気にはしてなかったです。ある日パチンコ屋に行ったら、隣のおばちゃんが「見てますよ!」って。「え? 何を?」って思いました。僕そもそもツイッターの見方がわからんもんですから。やっとメールができるようになったぐらいで。
佳子:何をアップしても気にしてないもんね。この間、ご近所の俳優さんに会ったら、「フォローしてますよ。いつもおもしろくて。でも僕は嫌だなあ」って言ってた。
英和:ははは。
佳子:私としてはこれ、最大のラブレターだと思ってるんですが、本人は何がおもしろいかわかってないみたいです。やっていることも普段のままだし、しかも結婚当初から変わらない。でも私も最初から「この人、おもしろい」と思っていたわけじゃない。最初は好きで一緒にいることがただ楽しかったんです。
(構成/フリーランス記者・中村千晶)
※週刊朝日 2022年9月16日号より抜粋