
私たちの所属する本願寺派の目的は、浄土真宗の教えを広め、心豊かな社会の実現に貢献すること。お経を唱えて法事をすることだけではありません。みなさんの人生にワンストップで寄り添い、参拝のきっかけづくりになればうれしいなという思いです。
人生相談や婚活サポートなど、築地本願寺の幅広い取り組みは他宗派の方が見学に来られます。今、法事やお墓の運営だけでは立ち行かないお寺が増えている。資金繰りや長期的な計画のため、お坊さんたちも経営的な視点を学びはじめています。ヨガ教室やマルシェを開くお寺が出てきたのはその流れです。
僕ら企業出身の人間は、経営理論を学び、(ピーター・)ドラッカーを読み、四苦八苦しながら現場で実践してきました。その知見が入ることで、お寺の在り方や施策をめぐる議論が活性化するといいなと思います。
一般社会での経験は仏教界でも役に立つ。ただ、転職先を探す感覚でお寺を探すのは、うまくいくとは限りません。僧侶や住職として活動できるお寺が見つかるかはご縁次第なところもありますし、そもそも仏教に興味がなければ、勉強も苦痛で続かないでしょう。けれど、伊能忠敬のように自分の好きなことを追求していれば、いつか道が開けるかもしれない。そこに年齢は関係ないということです。(本誌・大谷百合絵)
※週刊朝日 2022年9月9日号