昨年で楽しみだったのが、久しぶりの出場となった工藤静香さんと篠原涼子さん。どちらも私が紅白を一年中観まくっていた時代のアイドルたちです。特に24年ぶりの出場だった工藤静香さんは、長女Cocomiさんのフルートに乗せて、89年の大ヒット曲「黄砂に吹かれて」を歌いました。工藤静香母娘と言えば、今やネット民たちの「大好物芸能人」の筆頭なわけで、元旦から嬉々としてネットに張り付き、まるで義務かノルマでも課されているかのように、母娘の悪口を書き込んでいる人たちが、なんと多いこと! ふた言目には「コネ」「事務所」「忖度」など知ったような言葉を並べて悦に入っているのが伝わると同時に、最近では「私、音楽理解してます風」のコメントも散見されます。「娘の友人がフルートを習っていて、発表会に行ってきましたが……」から始まり、Cocomiさんの演奏について苦言を呈している人なんかもいましたが、そもそも「自分の母親がネット民」って、「父親が痴漢」「息子がオカマ」よりも恥ずかしい気がするのは私だけでしょうか。
それはさておき工藤さん。「黄砂に吹かれて」の出だしで歌詞を間違えてしまいました。思えば「ザ・ベストテン」最終回の第1位で同曲を歌った際も、同じ箇所で間違えたことは長年のファンの間で今も語り草です。それが24年ぶりの紅白で「再現」されるなんて、不本意ではあったでしょうが、ずっと観ている人たちには、かなり「萌え」なシーンでした。それにすらムキになって「プロ意識に欠ける!」と沸き立つ民たち。悪いけど、その程度では紅白にも静香にも勝てませんよ。
ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する
※週刊朝日 2023年1月27日号