中国が与那国島や尖閣諸島などの日本領土を攻撃した場合は「武力攻撃事態」になり、自衛隊は防衛出動する。中国軍が、日本に退避してきた台湾軍の航空機や艦船を攻撃すれば、やはり武力攻撃事態になる。

台湾から約110キロの距離にある与那国島の陸上自衛隊駐屯地。現在、沿岸監視部隊と電子戦部隊が配備されている(写真:aflo)
台湾から約110キロの距離にある与那国島の陸上自衛隊駐屯地。現在、沿岸監視部隊と電子戦部隊が配備されている(写真:aflo)

 一方、台湾有事になれば、米軍の海空軍が台湾の上空や近海で活動するだろう。米軍は自衛隊に補給支援を求めるほか、航空機や艦船が攻撃を受ければ、救助活動も要請する可能性が高い。その場合、日本が2015年に制定された安全保障法制に基づき、「重要影響事態」を宣言すれば、給油や弾薬提供、救難活動などの後方支援を行う。

■与那国島や石垣島での住民避難が課題になる

 さらに、事態が進み、自衛隊が一緒に活動している米軍が攻撃されれば、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅(おびや)かされる」という「存立危機事態」の宣言が視野に入ってくる。集団的自衛権の行使が可能になり、防衛出動という状況になっていく。

 山下氏は「米軍の行動とは切り離して、日本が単独で攻撃を受けた場合は武力攻撃事態になり、日本は一刻も早く米軍の来援を求めるだろう。逆に米軍の行動に関連して事態が推移し存立危機事態になる場合、日本は否応なく自動的に巻き込まれる」と語る。場合によっては、二つのシナリオが同時に別の場所で発生することもありうる。

 日本は今、年末に向けて国家安全保障戦略、防衛計画の大綱、中期防衛力整備計画の戦略3文書の改定を目指している。山下氏によれば、護衛艦や航空機などの保有数、地対艦ミサイル部隊を配備する石垣島と配備済みの宮古島の両部隊の増強、沿岸監視部隊と電子戦部隊しかいない与那国島に地対艦ミサイルなどの戦闘部隊を配備するのか──といった課題がある。

 同時に、尖閣諸島を巡っても、自衛隊による平時からの領域警備を認めるかどうかという問題もある。中国軍による尖閣諸島攻撃の事態に備え、日米安保条約の発動を円滑に進める働きかけも重要になる。

暮らしとモノ班 for promotion
「集中できる環境」整っていますか?子どもの勉強、テレワークにも役立つ環境づくりのコツ
次のページ