プログラムを“通し”で成功させることを貫いた。1度目、2度目は途中でジャンプのミスが出た。「あー」と悔しがる声が響く。

フィギュアスケートって華やかなイメージがあると思いますけど、『こんな泥臭い、必死にもがいている姿があるんだ』と見ていただきたくて」

 ありのままをさらけ出した。

■報道陣から自然と拍手

 そして、3度目。冒頭の4回転サルコーから、最後の3回転ルッツまで。4回転ジャンプ4本を含むすべてのジャンプをノーミスで降りると、迫力あるステップ、スピンも披露した。

「『SEIMEI』をノーミスするのが今回の目標だった。あの時(平昌五輪)よりうまいんだ、と証明したい強い意志があって滑り切らせていただきました」

 両手を広げるラストポーズを決めて、「ふー」と息を吐く。報道陣から自然と拍手が湧き起こる。

 練習の様子は、3日前に開設したばかりの公式YouTubeチャンネル「HANYU YUZURU」でも生配信した。平日の昼にもかかわらず、10万人以上が視聴した。

 本人がチャットを確認し、「やってほしいものがあったら言って下さい」とリクエストを募る場面も。1時間の氷上練習を終え、「ありがとうございました」。いつものようにリンク中央で深々と礼をした。

 プロ転向を表明した7月19日以降、初めてとなる公の場での練習だった。

「会見が終わってから、ずっと今日まで緊張しながら生活してきました。『競技者よりもハードな練習をしなきゃ』と思っているし、実際にしていて。今までは試合に追われながら頑張ってきましたが、今は皆さんの期待を超えたい。そっちの方が大変だなと思いつつ、ある意味、すごく充実した日々を送れています」

 この日は前人未到のクワッドアクセル(4回転半)にも挑んだ。

「思ったより体が動かなくて悔しかったんですが、これからまた練習して、絶対に4A(4回転半)を降りる姿を見ていただけるように、死に物狂いで頑張っていきたいと思います」

 プログラムに組み込んでの成功をめざす姿勢は、これまでと変わらない。

「まだその(成功の)確率になっていないし、頑張って全日本の頃の4回転半くらい。これまでの経験で学んだことを生かし、もっとうまくなっていきたいです」

練習の合間にファンからのコメントを読む羽生さん
練習の合間にファンからのコメントを読む羽生さん
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