水素は次世代のクリーンエネルギーとしても注目される。「子どもたちの未来と密接に関わるテーマです」と吉野敏弘編集長(撮影/植田真紗美)
水素は次世代のクリーンエネルギーとしても注目される。「子どもたちの未来と密接に関わるテーマです」と吉野敏弘編集長(撮影/植田真紗美)
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 科学を伝えるメディアや人材が注目されている。「学研の科学」の12年ぶりの復刊、「科学を好きな人を増やす」ウェブメディア「ナゾロジー」、一般向けに「科学技術コミュニケーター養成プログラム」を開講する北海道大学。なぜいま「科学」なのか。AERA2022年8月15-22日合併号の記事を紹介する。

【写真】学研の社内にはかつての「科学」の付録の数々が展示されている

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 ありの巣の観察キットや色水実験セット……。こうした付録に心を躍らせた、かつての「科学」読者も多いだろう。1963年に創刊した学研の付録つき学年誌「1年~6年の科学」。2010年に休刊したが、今年7月、12年の時を経て「学研の科学」として復刊した。

 今なぜ再び「科学」なのか。

 吉野敏弘編集長は、復刊の理由の一つに「(世の中の)潮目が変わった」ことを挙げる。部数が減少していった2000年代、成績やテストの点数に直結するものが求められる風潮があった。その後、学習指導要領の改訂もあり、知識の詰め込みよりも主体的な学びが重視されるようになった。客観的に物事を見る力や観察力を養うことができる科学の学びは、その流れにマッチしていた。

 復刊号の組み立てキットは「水素エネルギーロケット」。手回し発電機をくるくる回すと、水が電気分解されて、水素と酸素が発生する。水素がたまったところで発射ボタンを押すと、水素を爆発させるための小さな雷が発生し、その爆発エネルギーでロケットが飛ぶ仕組み。最大飛距離は約7メートルだ。

 言葉で説明すると複雑だが、実際に手を動かしてロケットを飛ばすと、その過程がすんなり頭に入る。何より、ロケットが飛ぶと大人でも歓声をあげてしまうほどだ。大事なのはその「体験」なのだ、と吉野編集長。

「まずは夢中になれる入り口があることが大事。その裏に科学がある、ぐらいでいいんです。知識や情報は後からついてくるし、子どもは“好き”を見つけたら勝手に突き進んでいきます」

 復刊号はネット書店では早々に売り切れ、SNSには子どもたちの動画があふれた。飛ばす前の緊張気味の顔、飛んだ後のうれしそうな顔、飛ばずに不思議そうな顔をする子。感じた「ドキドキ」と「なぜ?」はきっと、子どもたちの糧になっていく。

■絵として浮かばせる

 科学が注目されているのは子どもの世界ばかりではない。「エセ科学」を信じる人やエセ科学商品が社会にあふれる一方で、論文等に裏付けされた科学ニュースを伝えるウェブメディアも支持されている。「科学を好きな人を増やす」をうたう「ナゾロジー」だ。

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